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リリカルってなんですか?
無印編
第二十二話 裏 中 (リンディ、武装隊、アルフ、リニス、プレシア)
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ろうか。アルフには、そんなリニスがよく分からなかった。だが、分かったのは、目の前のリニスが、アルフの記憶の中にあるリニスとは異なる存在であることだ。

「……そうかい」

 アルフの中で何かが吹っ切れたような気がした。目の前の存在が、リニスとそっくりなのは否定できない。もしかしたら、と心のどこかで思っていたのも事実だ。だが、リニスの口から自分はリニスではないということを聞かされた瞬間、アルフの中で、過去のリニスと目の前のリニスが等式で結ばれる要素が一切なくなった。

 そうだ、最初から考えれば、それは当然の話なのだ。フェイトにあんなことを言うプレシアに我慢できるような彼女ではなかったはずなのだから。あの場で、従者のように大人しく従っていたことこそが何よりの証拠。それなのに、どうして自分は躊躇していたのだろうか。

「それじゃ、あんたを遠慮なくぶっ飛ばせるねっ!!」

 一切、遠慮がなくなったアルフは、今度こそという気概を振りかぶった拳に乗せてリニスに飛び掛った。その速度は、先ほどよりも鋭く、速い。だが、その拳がリニスに届くことはなかった。その拳がリニスの顔面に届く直前にアルフの手首は、幾重もの鎖に絡みつかれているのだから。

「なっ!?」

 ―――チェーンバインド。

 アルフも使える拘束魔法。それを教えたのはリニスであり、アルフもそれを使えることを知っていた。だが、魔法を発動した気配はなかったはずだ。そんな、アルフの疑問を読み取ったのだろうか。種明かしするようにゆっくりと動き、振りかぶった拳をチェーンバインドによって無理矢理、下ろさせながら口を開く。このとき、アルフは既に他の場所から発生したチェーンバインドによって縛られており、身動きができない状態になっていた。

「あなたのお喋りに無意味に付き合ったわけではありません。あなたに気づかれないように慎重に構成してしましたからね。しばらく、時間が必要だったのです」

 策が成ったというのに、嬉しそうに微笑むでもなく、こんな策に引っかかってしまったアルフを蔑むわけでもなく、淡々と無表情のままリニスは、教え子に諭すような口調で言った後、近接戦闘中では、とてもできないほどに大きく振りかぶり―――

「それでは、先の宣言どおり、黙ってもらいましょう」

「かはっ!」

 その拳を躊躇なく、アルフの鳩尾にめり込ませた。使い魔とはいえ、痛覚もあり、生命体に近い活動をしている。鳩尾に叩き込まれた拳によって肺にあった空気を強制的に吐き出されたアルフは、一瞬で酸欠状態に陥り、そのままリニスの宣言どおり気を失いそうになった。

 どさっ、と倒れる身体。上手く呼吸ができない体は、意識を保つことを放棄しており、今は気力で持っているようなものだ。だが、それも長く続くこともない。

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