無印編
第二十二話 裏 中 (リンディ、武装隊、アルフ、リニス、プレシア)
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数少ない一手は、確実にアルフの隙を突いており、アルフが捌けたのは、どれもここに来るまでに傀儡兵を相手にした戦闘の高揚感によって集中力が増していたからに他ならない。もしも、最初の戦闘がリニスであれば、最初の隙を突いたリニスの一撃で、彼女の宣言どおり、アルフは黙って床に沈んでいただろう。
このままでは、埒が明かないと思ったのだろう。一旦、仕切りなおすためにアルフはリニスと距離を置いた。リニスは、あえてそれを追わない。お互いに構えたままにらみ合う。
不意にアルフの脳裏をよぎったのは、まだ何も知らなかった時代の出来事。フェイトがいて、アルフがいて、リニスが魔法を教えていたあの頃の記憶だった。あの頃のリニスは、目の前に立つリニスのように無表情ではなかった。妹を見守る姉のように優しく微笑んでいたものだ。フェイトにも、そして、アルフにも。
「……何があんたを変えたんだい」
思わず、ポツリとこぼれてしまった疑問。目の前のリニスが、リニスと認めたくなかったが故の呟きだった。だが、それは独り言というには少々、声量が大きかったらしく、猫耳を持つリニスの耳にも届いていた。
「アルフ、あなたはF.A.T.E計画を知っていますか?」
「………ああ」
突然、口を開き始めたリニスを警戒しながらも、アルフは聞きたくもない忌々しい計画の名前に頷いた。
頷いたアルフに対して、リニスは、まるで教師のようによろしい、とでも言いたげに頷くと先を繋いだ。
「使い魔とは異なるコンセプトで人工生命体を作る計画がF.A.T.E計画です。ならば、その計画のために必要なことは? まず、最初に研究することは、使い魔の契約魔法とは? ということを知ることから始まります」
『使い魔とは異なる』というのが命題なのだ。異なるものを作る際に先行研究を調べることは、研究においては重要なことである。それは優秀な研究者である、いや、優秀な研究者ゆえにプレシアは、使い魔の魔法に関して研究したことだろう。
「その研究の過程で、いくつかの使い魔の契約魔法について成果を出しました。その一つが、私です。本来、機械のように命令を受諾するか、あなたのように人と変わらないタイプの使い魔しかできなかったのですが、そこに感情を排除した柔軟な使い魔を作る契約魔法をプレシアは、成果として出しました」
前回のプレシアは、私をリニスとして作ったためにあなたと同じタイプの使い魔でしたがね、とリニスは付け加えた。
「つまり、姿形、記憶は同じでも、あなたの目の前の私とあなたの記憶の中にある私は同じとは思わないほうがいいですよ。私も前の私の感情が理解できない部分が多々ありますから」
理解できない感情を抱いた他人の記憶を見せられるということは、まるで映画を見るようなのだ
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