無印編
第二十二話 裏 前 (アルフ、リンディ、
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れを見て最初に叫んだのは、なのはだ。しかも、管制塔一杯に響くような大声で。だから、管制塔のいた誰かが上げようとした声を上げることはできなかった。人質に目隠しや後ろ手に縛ったりすることは考えられても、まさか動物のように首輪までつけるとは。さすがにそこまで想像していなかったリンディは翔太の無事な姿に安心しながらも、絶句していた。その隙を突くようにプレシアは、畳み込むように言葉を紡いだ。
『さあ、これで分かったでしょう。この子は無事よ。ジュエルシードを渡しなさい』
プレシアの再度の要求で、リンディは我に返る。そう、次にそうくるのは当たり前だった。気を取り直したリンディは、少しだけ心を落ち着けて、プレシアに問う。
「待ちなさい。貴方はジュエルシードなんてロストロギアを何に使おうというの?」
渡しなさい、といわれて、「はい、分かりました」とはいかない。翔太の無事が確認された以上、ここから先は交渉だ。相手と自分の妥協点を見つけて翔太を返してもらう。どこまで妥協できるか分からない。最悪、条件の如何によっては、翔太を切り捨てることを考えなければならないかもしれない。もっとも、それは最悪であり、考えたくもない結論ではあるが。
だが、リンディは、忘れていた。相手は計算された誘拐の犯罪者ではなく、ただの研究者だったことを。こちらがプロだからと言って相手がプロとは限らないことを。
リンディの言葉は誘拐という事件においてはセオリー通りだっただろう。だが、プレシアにとっては、余計なことに首を突っ込んでくる言葉に聞こえたのだろう。プレシアは、嗤っていた表情を不快なものに変えていた。同時にそこから感じるのは、明らかな苛立ちだった。
『……ごちゃごちゃ五月蝿いわね。大人しくジュエルシードを渡せばいいのよ』
怒っているような低い声。その様変わりしたようなプレシアの様子にリンディは、焦る。怒りは、冷静な判断を失わせる。なによりも、この状況においては怒るには早すぎる。もっと様子を伺うと思っていたのだが。
突如として、過程を通り越して、何歩か先に進んでしまった状況にリンディの思考が追いつかないうちに状況に変化が訪れた。苛立ったようなプレシアが、使い魔を一瞥すると、その使い魔が動き出したのだ。何かするつもりなのか? と疑問符を浮かべてみていると、転がされていた翔太の後ろ手に結ばれていたバインドを解いて、そのまま天井につるしてしまった。まるで、磔にされたように空中で固定される翔太。
その行動にどんな意味が? と思っていると、翔太を空中に吊るした使い魔は、拳を振りかぶり、そのままその拳を翔太の顔面にたたきつけた。
「プレシアっ! あなた何をっ!?」
管制塔にいくつかの悲鳴が上がる。その間にも翔太は殴られ続けられていた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ