無印編
第二十二話 裏 前 (アルフ、リンディ、
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イトをあれだけ痛めつけた少女なのだ。今は、翔太が誘拐されたショックで呆然としているような気がするが、彼女が正気に戻ったとき、どうなるか、アルフには想像がつかなかった。
―――あの糞婆、虎の尻尾を踏んでいきやがった。
いい気味だ、と思うアルフの聴力に優れた耳が、先ほどの物音を聞きつけたのだろう、この部屋に近づいてくる翔太の母親の声を捕らえていた。段々と声が近づいてくるところから考えるに彼女は、この部屋に近づいているようだった。
「さて、どうやって、説明したもんかね?」
今のフェイト―――アリシアの状況。窓の外のなのは。そして、翔太が誘拐された事実。
それらを翔太の両親に説明しなければならないということを考えて頭が痛くなるアルフだった。
◇ ◇ ◇
リンディ・ハラオウンに翔太誘拐の一報が入ったのは、事件が起きた三十分後だった。それを早いと見るか、遅いと見るかは人によるだろうが、なのはに渡していた緊急用のデバイスを使ったアルフの報告により、艦内は騒然としていた。
当然といえば、当然だった。なぜなら、ジュエルシードは既にすべて収集しており、20個のジュエルシードはアースラの艦内にあるのだから。プレシアがジュエルシードを欲しており、フェイトという手駒を送り込んできていたことを知っていたため、収集が終わった今でも第二種警戒配置にはしているが、それは収集し終えたアースラを襲撃するのではないか、という考えに基づいた警戒であり、翔太やなのはに関する警戒ではない。
だから、誰もが予想外の一報に慌てたのだ。そして、それはリンディも同様で、なのはのデバイスを使って通信してきたアルフを見たときは、フェイト―――アリシアに関して何かあるのか? 程度にしか考えていなかったのに突然、翔太がプレシアに誘拐された、などと聞かされれば、驚いてしまうことも仕方ないことだろう。艦長席で、リラックスしながら、砂糖が飽和量限界まで入った緑茶を飲んでいたリンディが、漫画のように緑茶を噴出さなかったのは、女性のたしなみ故だろう。
こほっ、こほっ、と咳き込みながらもアルフの一報を聞いたリンディは、その情報の確証を取り、すぐさま艦内全域に第一種警戒態勢―――戦闘配備を発令した。行動は、翔太の誘拐という不可解なものではあるが、今回の事件の中核であるジュエルシードを狙うプレシアが動いたのだ、一当てあると考えるのが当然だろう。
第一種警戒態勢に騒然となりながらも、各部署に連絡を取りながら動く管制塔と整然と動く艦内を心強く思いながらリンディは、管制塔の一番上に備え付けられた艦長席に身を沈ませる。半分ほど減っている先ほど飲んでいた緑茶の湯飲みを手に取り、少しだけ冷めた緑茶を口にしながらリンディは考える。
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