無印編
第二十二話
[9/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
僕がどうして殴られるのか分からない。ましてや、僕はマゾといわれる人種でもないので、痛みに快楽を覚えるわけでもなく、自分が悪いわけでもないのに、ごめんなさい、と謝りたくなってきた。
まるでサンドバッグのように殴られる僕だったが、不意にぴたりと痛みがやんだ。どうなったんだ? と思うが、目の上が腫れているのだろう。はっきりと目の前の状況を見ることができなかった。しかし、これで殴られなくなった、という安堵のためだろう、一気に気が緩んでしまった。
どさっ、という音と共に倒れる僕。床に転がされるような形になるが、リノリウムのような床のひんやりと冷たい感覚が、殴られて熱を持っている僕の肌には優しく感じられた。
どれだけそうしていただろうか、またしても首が引っ張られる。
顔を上げると、僕を無表情に僕を見てくる猫耳の女性。また、殴られるのか? と恐怖を覚えていたが、彼女が口にした言葉はそうではなかった。
「行きますよ」
どこに? という問いも許されず、ずるずると引っ張られる。もはや身体中の痛みから反抗する気力もなく、ずるずると引きずられる。成すがまま成されるがまま、引っ張られた僕が連れて来られたのは大きなホールのような場所。そこの中心に彼女が立つと僕たちの周りは、黄色い光に包まれた。
魔法? と思ったが、次の瞬間には周りの風景が一変していた。こういう魔法に僕は心当たりがある。転送魔法だ。つまり、僕はどこかに連れて来られたのだろうか? だとすると、どこに? と疑問に思う間もなく、聞き覚えのある声が僕の耳を打った。
「ショウくんっ!!」
間違いではなければ、その声はなのはちゃんのものである。ならば、ここはアースラなのだろうか? そう思い、痛む顔を上げて少しだけ頭を上げてみると、リンディさんがジュラルミンケースのようなものを猫耳の女性に渡していた。その顔は、苦虫を潰したように渋いものだった。
だが、その表情に気づいているのか、気づいていないのか、猫耳の女性は、淡々とそれを受け取り、丁寧にもペコリと頭を下げるとまたしても、先ほどと同じように黄色い魔方陣に包まれていた。今度は、僕を連れて行くことなく、一人で姿を消した。
「ショウくんっ! 大丈夫っ!?」
彼女が姿を消すと同時に駆け寄ってきたのは、なのはちゃんだ。しかも、制服姿のまま。いや、もしかしたら、それはバリアジャケットなのかもしれないけど。僕の視界からは、涙をボロボロと流しながら、オロオロと心配そうに僕を見つめるなのはちゃんが見えた。
心配かけちゃったなぁ、と思いながら、少しでも彼女の心配が収まるように痛む顔で、無理矢理笑みを作る。
「あははは……、ちょっと身体中が痛いかな」
笑っているが、冗談抜きで本当に痛い。おそらく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ