無印編
第二十二話
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のだろうか? と問いたくなるほどに僕は仰向けのまま、床を引きずられていく。そこに僕の意思が介在する余地はまったくなかった。
どのくらい引きずられたのだろうか。いい加減、首が痛くなってきた頃、ようやく彼女の足が止まった。僕は、引きずられていたせいで首に食い込んだ首輪の圧迫から解放され、二、三度咳き込んだ後、うつ伏せの状態から、背筋を利用して頭を上げた。
僕が顔を上げて目にしたのは、通路の奥、まるで通路の終わりを示すようにひときわ大きなシリンダー。そのシリンダーを極上の宝石を愛でるように撫でるプレシアさんの姿。そして、そのシリンダーの中身は、エメラルドグリーンの液体をゆりかごにして眠る一人の少女の姿。その少女は、僕がよく知っている妹と同じ髪をしており、同じ顔をしていた。
「アリシア……ちゃん?」
彼女の姿を目に入れた瞬間、僕はその姿が信じられず、脳で処理しきれる限界を超えて、考えていることが、そのまま口に出ていた。ただし、その声は自分で聞いておきながら、力がまったく感じられず、弱々しいものだったことは言うまでもない。それほどまでに僕は目の前の状況が信じられなかったのだから。
だが、プレシアさんにとっては、僕の呟きは別の意味で捉えられたらしい。
「そうよっ! この子がアリシアよっ!」
まるで自慢のおもちゃを自慢する子どものように目を輝かせながら、それでも、そのシリンダーの中身のアリシアちゃんを見つめる瞳は、優しい母親のように慈愛に満ちていた。
「アリシアは、あれよりももっと優しく笑ってくれたわ。我侭も言ったけど、それでも私の言うことを聞いてくれた。それに……アリシアは、私にもっと優しかったもの」
恍惚とした表情で、愛でるようにシリンダーを撫でるプレシアさん。
だが、僕の脳は、彼女の言ったことを理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。
アリシアちゃんと瓜二つな少女。姉妹という意味で似ている訳ではない。鏡のようにそっくりな二人。そんな可能性として考えられるのは、彼女たちが一卵性双生児である場合、つまり、双子である場合だ。しかしながら、その場合、彼女の言動に一貫性がない。アリシアちゃんが、目の前の少女の贋物という表現が合わないからだ。だから、双子ということはないだろう。
ならば、他の可能性は? と僕の知識を探った結果、可能性として一つだけ考えられた。
「まさか―――」
僕はその可能性が信じられなくて、思わず声を上げていた。
―――クローン技術。
地球では禁忌とされる技術。いや、牛や羊ではすでに適応されているという話は聞いたことがあるが、人間に適応された例は聞いていない。倫理的にも色々考えなければならないからだ。僕も、この考えは馬鹿げて
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