無印編
第二十二話
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失っているのだろう。だが、それは間違いだ。彼女は既に手に入れているのだから。
「ねえ、アリシアちゃん。僕は、君の事を知ったよ」
僕の言葉に反応したのか、ピクンと肩が動く。反応してくれただけ、まだ救いがある、と思い僕はさらに続けた。
「でも、そんなことは関係ないよ。君は、アリシアで、僕の妹なんだから」
「妹?」
「そうだよ。アリシアちゃんが、あの人から、贋物といわれても、失敗作といわれても、アリシアちゃんじゃないと叫んでも、僕は、君をアリシアちゃんだと叫ぶし、君が僕の妹であることも絶対に否定しない」
今までピクリとも動かなかったアリシアちゃんの首がゆっくりと僕のほうへと向いた。その瞳には少しだけ光が戻っているような気がする。
「でも、私は……ゴミって言われたんだよ」
「それでも、君は僕の妹だ。アリシアちゃんだ。母さんにも僕にも甘えて、アキの面倒を見てくれるお姉さんで、蔵元家の長女だ。それは絶対に誰にも否定させない」
僕の手は自然とアリシアちゃんの頭へと伸びていた。そして、ゆっくりと優しく彼女の頭を撫でながら子どもに言い聞かせるようにできるだけ優しい声で言う。
「ねえ、だから、何も不安がることないんだよ。誰がどんなに否定しても、僕は否定しない。君がアリシアちゃんであることも、僕の妹であることも。君は、安心して、ここにいていいんだ」
そう、彼女は、自分のすべてが否定されて、立ち位置が分からなくて不安で、不安で、その不安に押しつぶされてしまっていた。ならば、彼女を安心させる術は、一つしかない。彼女を肯定してあげればいい。確かな立ち位置を示してあげればいい。それだけで、彼女はきっと安心できるだろうから。
やがて、撫でられるままだった彼女は、まだ不安が残る瞳でまっすぐに僕を見つめながら問う。
「本当に? 本当に私は、ここにいていいの?」
「もちろん、アリシアちゃんは僕の妹だからね」
そうやって、断言してあげることでようやく彼女は安心したのだろう。彼女の瞳の中から不安の色はようやく消えて、僕の家で浮かべていた向日葵のような笑みを浮かべてくれた。
「うんっ!」
その表情を見て、ああ、よかった、と安堵する。僕の中では既に彼女は妹のような存在だったらしい。一週間も一緒の家に住んで、一緒に寝たりすれば、当然なのかもしれないが。だからこそ、失うことは考えられなかった。もしかしたら、僕は彼女にお礼を言うべきなのかもしれない。僕の妹という立ち位置を受け入れてくれて、ありがとう、と。いや、それは正確ではないのかもしれない。なぜなら―――
「そうよ、アリシアちゃんは、私の娘なんだから」
「俺の娘でもあるがな」
いつの間に僕の背後にいたのやら、母さんと親父が
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