無印編
第二十二話
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ておくから」
半分寝ぼけていた僕はなのはちゃんの言葉の意味を理解することができなかった。もはや、意識は半分ほど夢の中なのだから。だから、僕は、なのはちゃんの言葉に曖昧に頷くことしかできなかった。
そして、なのはちゃんの笑みを納めた次の瞬間には、僕の残り半分の意識すら夢の世界へと誘われるのだった。
◇ ◇ ◇
「んっ……」
次に目を覚ましたときに最初に目に入ったのは、親父の顔だった。目覚めとしては最悪だ、と思ってしまうのは、男の子ならば、仕方ないことだろう。まだ半分寝ぼけたままの頭で、どうにか上半身を起こすと周りを見渡して、ここがアースラの内部であることが分かった。おそらく、クロノさんが言っていた医務室だろうということは簡単に予想できた。
「おっ、目を覚ましたか」
ショウが、目を覚ましたぞっ! と誰かを呼ぶ親父。その正体はすぐに分かった。パタパタと駆けるように寄ってきたのは、ふわふわの髪を持つ母さんだったからだ。
「ショウちゃんっ! 無事で、よかったわっ!」
僕の両親はあのリンチのような場面を見ていないのだろうか。実は、リンチで怪我だらけでした、なんていうと母さんは泣きそうだから、僕は黙っておくことにした。
「アリシアちゃんも、全然目を覚まさないし、ショウちゃんまで目を覚まさなかったら、と思っていたのよ」
だが、どうやら僕の気遣いは無駄だったらしい。すでに母さんは泣いていた。母さんの涙を見ると、申し訳なさがこみ上げてきて仕方ない。
「ごめんなさい」
「いいのよ。あなたが無事なら」
そういって、抱きしめてくれる母さん。母さんの胸の中で安心してしまうのは、僕の体がまだ子どもだからだろう。この甘い匂いに安心してしまううちはまだ子どもなのだろう。だが、まあ、今はそれでもいいか、と思うことにする。
傍からみれば、感動の再会なのだろうが、いつまでもこの甘さに浸っているわけにはいかない。僕よりも母さんには寄り添ってもらわなければならない子どもがいるからだ。
「ねえ、母さん、アリシアちゃんは?」
「え? そこで寝てるわよ」
母さんの視線の先には、いつもツインテールにしている髪を下ろしたまま横になっているアリシアちゃんの姿があった。僕は、ちょっと、と言って母さんの腕を解くと、患者用のベットから降り、彼女のベットの隣に立つ。そこから見る彼女の顔に生気はなかった。虚空を見つめる瞳に生きる気力がまったくと言っていいほどなかった。
無理もないかもしれない。人は、自分がどこに立っているか分からずに生きていけるほど強くない。だから、家族を、他人を求める。今の彼女は、唯一の家族であったプレシアさんからすべてを否定された形で、存在意義を見
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