無印編
第二十二話
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「………っ。ここは?」
僕が目を覚まして最初に発した言葉は、僕が現在寝転がっている場所についてだった。だが、当然、その問いに返ってくる答えはなかった。だから、仕方なく僕の五感で感じられる要素から予想するしかないのだが、それも不可能のようだった。
僕が寝転がっている床は、まるで廊下のリノリウムのように冷たく、堅い。何時間、寝ていたか分からないが、それなりの時間を寝ていたのだろう、身体中が痛い。今は仰向けで寝ているわけだが、見える天井は高く、薄暗くて、天井が確認できなかった。いや、天井に光はないのだろう。周りが薄暗い緑色に発光している。
さて、本当にここは何所なのだろうか?
どうしてこうなったのか? 僕の記憶は意外にもはっきりしていた。端的に言ってしまえば誘拐されてしまったのだが、そのことへの心配はあまりなかった。これは、ここ一ヶ月の魔法やらなんやらの出会いで鍛えられたのだろうか。こんな状況に陥っておきながらも、自分でも大丈夫だろうか? というぐらいに落ち着いていた。むしろ、自分の心配よりも、ここに攫われる前のアリシアちゃんやアルフさんの状態のほうが心配なぐらいだ。
さて、どうしよう? と僕は、仰向けに寝転んだまま考える。
魔法は………使えないようだ。幸いなことに僕は、デバイスなしでも多少の魔法は使える。使えるといっても、プロテクションなどの初歩的な魔法なので、この場で役立つとは思えないが。魔法のプログラムはかけるのだが、魔力を通すシークエンスで失敗してしまう。魔力が拡散するとでも言うのだろうか。原因は……おそらく、首にある首輪のようなものか、後ろ手で拘束されている手首に巻かれた手錠のようなもののどちらかだろう。デバイスがあれば、なんとか、とは思ったが、就寝前を狙われたため、クロノさんから預かったデバイスを持っているはずもなかった。
物理的に逃げ出す―――知らない場所で無闇に歩き回るのは危険だ。なにより、僕の両手は不自由極まりない。こうやって、仰向けになっている場合には、手が痛いぐらいで済んでいるが、逃げ出そうとしてこの建物の中を歩き回るにはやや不自由だろう。
さて、本当にどうしたものか、といい加減仰向けになって寝ているのも手首が痛くなったので、腹筋と少しの反動をつけて起き上がった後、胡坐で座り込んだまま考える。
座り込んだ状態で、首を回して周りを見渡してみると、最初の予想は当たっていたようで、天井部分にはまったく光がない。あるのは、周りの人が入れるほどのポットの中の水がエメラルドグリーンに光っているぐらいだ。それが部屋の一部を照らしており、やや不気味に思えた。
どうしたものか? と考えても答えが出ないという結論を出した僕は、諦めて誰かが来るのを待っていようと、決めたとこ
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