萌芽時代・出逢い編<中編>
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かれる様になったし」
「ふーん」
猿飛殿の皿に乗っていた最後の団子をかすめ取って、適当な相槌を返す。
隣で悲しそうな声が上がったが、無視した。
「正直、戦場でのお前の姿を見せられた時は、年甲斐も無く俺の胸も熱くなったもんだぜ」
それが普段ではこれだからなぁ……と言ってなんか可哀想な人を見る目で見つめてくる猿飛殿。
失礼な人だな、全く。
「良い歳したおっさんに惚れられても全然嬉しくないね。同じ台詞でも、言われるんだったらミトみたいに可愛い子がいい」
「ちょ、お前、誰がそんな事言ったか! それに俺はおっさんじゃねぇ!」
「やだね、余裕の無い男は。そんなんじゃ、今度嫁さんに息子を連れて実家に帰られるぜ」
だからちげーし! と叫ぶ猿飛殿を見つめて小さく笑う。
一族の者達と過ごす時間も良いが、こうして猿飛殿の様な一族外の忍びと話す事もまた楽しいものだ。
これ以上からかうとクナイが飛び出てきそうだったので、団子代を置いて私は立ち上がった。
「あら、柱間様。もうお帰りですか?」
「これ以上猿飛殿と一緒にいると、彼の新妻から妬まれそうだからね。今日はこれくらいにしておこうと思って」
茶化した物言いに、お茶屋のお姉さんが口元に袂を当ててくすくすと笑う。
腰に差した刀の位置を少々動かして、落ち着くところに直した。
「じゃ、オレは暫く空区を回ってから帰るわ。猿飛殿も奥さんが怒り出さないうちに早く帰れよ」
「やかましいわ!」
猿飛殿の怒声を背に、私は茶屋を出た。
猿飛殿と別れてから、私は普段は行かない区域へと足を運んでいた。
理由は新しい店舗の発掘である。数多くの店が建ち並ぶ空区では、店の入れ替わりも激しい。あまり良くない品物を扱っているお店は周りからも客からも叩かれるし、より良い品を扱うお店に客が流れる事なんてざらに有る。
そうして新しく入って来た店舗に足を運んでどのような品を扱っているのかを調べるのも、空区に来る目的の一つである。
「ええと、聞いた話ではこの辺りの区域だった筈だけど……」
無数の看板が立ち並ぶ中で、一人途方に暮れる。
あまりにも店の数が多いせいか、どこが目的の店なのか分からない。
しょうがないので、この辺りの店でめぼしいとこを見つけて覗いてみるか。
適当なお店を冷やかしながら通りを歩いていると、首に布を捲いた猫が目の前を通り過ぎようとしていた。
随分と毛並みの良い猫だな。どこぞのお店で飼っているのだろうか?
ううん、と首を傾げる。
こちらの視線に気付いたのか、猫の黒い目が私を見つめながら、フニィと小さく鳴く。
まるで付いて来いと言われた様な気がして、猫を追って自然と歩き出した。
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