第七話 初めての市場
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と、どうやら専属契約を交わすと様々な情報や現地までの船や飛行機など手配、もしくはその契約者自身が操縦し送ってくれるらしい。ただその代わりその現地で狩った獲物を安く(法に沿った最低ラインがあるが)売らなければならないらしい。その値段は交渉次第だ。
他にも定期的に出される依頼をこなしたり、他のライバル業者には売ってはならないといった契約もあるらしいがトムの所は前者はあるが後者はないとのこと。つまり……移動手段が徒歩だけの俺からしてみればそれはかなり有難いサポートなのだ。
「なぁ、俺なんかどうだ?」
「おっ! 契約するかっ!?」
顔を全面に出し、凄い勢いで迫ってきやがった。ちけぇよ。トムじゃなかったらぶっ飛ばしてるところだ……女性はウェルカム。
「あぁ移動手段が増えるのは有難いからな。さしあたってこの鰐鮫だっけ?これ売るよ」
「マジかっ!? って安くしてくれんだろうな?」
「トムの言い値で売ってやる。いろいろ世話を焼いてくれたお礼だ」
「お礼って、ただスペース貸してちょっとした説明しただけだが」
それでも俺には有難かった。見知らぬ俺にここまでしてくれたのは嬉しかった。何より俺の新たな名前が出来たことの祝いでもある。トムがいなかったら、まぁいつか気がついただろうけど、名が無いことを気づかせてくれたからな。
トムはウンウンと唸りながらもまるで子供が買い物時におやつをねだるかのように控えめに言ってきた。
「じゃあ……八億で、どう?」
「良いよ良い……よ? はははは、八ィィ億ぅぅ!?」
八億っておい。桁が凄まじいな、家が何件立つんだよ。確か前世の平均生涯年収でもそこまでいかなかったよな。それをこいつ一匹でって。久しぶりに頭がショートしそうだ。
「あぁ〜さすがに安すぎたか。鰐鮫なら1kg五万近くするもんな。こいつなら十二億はくだらねぇ」
「い、いやそうじゃなくて。こいつそんな価値あんのかよ。八億って」
「あぁ別に驚く程のことじゃねぇだろ。捕獲レベル27の鰐鮫。体長は目測四十三メートル。体重も目測だが二十七トンはある。それに何より生け捕りだからな。魚獣類は鮮度が命。それにこいつの肉は高級で、刺身でもクセなく食べられるらしい。当然そのぐらいの値段はするさ」
「はぁ〜こいつそんな凄い奴だったんだなぁ」
「俺から言わせてもらえば、それを生け捕りにして、背負いながら海上を走ったお前の方が凄い奴だけどな」
「修行の賜物ってやつよ。あぁ、そうそう八億だっけか。それでいいや」
マジか!?と驚きながらも嬉しそうにトムが飛び跳ねている。何というか無邪気な奴だな。思わず父親目線で見てしまう……いや前世の時との年齢を加算すれば、いやいやそれでも二十六歳だ。父親はねぇな。
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