第十三話 商人達の憂鬱
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ずに船を動かしてみたいもんだ。
俺が溜息を吐くとマリネスクが“船長”と声をかけてきた。
「ハーマンだけじゃありません。黒姫は他にもガルーダ、ファンロン、メンデルの三つの輸送会社を手に入れてます」
「ほう」
どれもハーマンと同じだな、貴族と強く結び付いてた。得意先の切り替えが上手くいかなかったんだろう、潰れかけた所を黒姫が安く買ったというわけだ。しかし四社合わせれば輸送船は二百隻を超えるかもしれんな。
「今では黒姫はフェザーンの輸送会社を使って同盟と帝国の間を行き来しているんです、大したもんですよ」
「なるほどな、イゼルローン回廊だけじゃなくフェザーン回廊もか……。そうなると上の方はなんか嫌がらせとかしそうなもんだがな」
俺の言葉にマリネスクがまた肩を竦めた。
「黒姫をコケにした結果がヴァンフリート割譲条約ですからね。嫌がらせも難しいと思いますよ」
……そうかもしれないな、並みの相手じゃないのは確かだ。イゼルローン要塞を分捕ってローエングラム公の戦勝祝いに進呈する、身代金の代わりにヴァンフリート星系を貰い受ける。宇宙を舞台にやりたい放題やっている、豪快そのもの、まさに宇宙海賊と言うべきだろう……。片手に杯、片手に美女、羨ましい限りだ。
「それと黒姫一家は海賊組織に強い影響力を持っていますからね」
「ワーグナー一家か」
俺の言葉にマリネスクが首を横に振った。
「それだけじゃありません。ベーレンス一家とシュワルツコフ一家もです」
「どういう事だ、それは」
ベーレンス一家はアイゼンフート星系、シュワルツコフ一家はエッカート星系を縄張りとしていたはずだ。どちらも中規模の組織でフェザーンに近い。しかし黒姫が彼らと親しいなんて話は聞いた事がない。黒姫が親しいのはワーグナー一家の筈だ。カストロプの動乱では協力して阿漕に稼ぎまくっていた……。
「連中も内乱で結構痛手を被ったんですよ、貴族と密接に関わっていましたからね。そこに手を差し伸べたのが黒姫なんです」
「と言うと」
「フェザーンから帝国領内への輸送船の護衛を彼らに頼んでいるんです。連中にとって黒姫は大切な客なんですよ」
「……」
「フェザーンが嫌がらせをして黒姫が輸送船を出さなければ連中は大きな損害を受けるんです。そうなったら連中が何をするか……」
マリネスクの声は溜息交じりだ。
「積荷を奪うっていうのか」
「そうは言いませんが、……自分の所で補給しろとか通行税を払えとかって言うのは有るかもしれません」
「なんてこった、喉元に刃物を突き付けられてるようなもんじゃないか」
「ええ」
溜息が出た。マリネスクも溜息を吐いている。とんでもない野郎だな、黒姫は。自分の手は汚さずにフェザーンを締め上げるのか。豪快なだけじゃない、何とも陰険で狡
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