第十三話 商人達の憂鬱
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ない。本来なら黒姫一家は何らかの抗議、或いは実力での警告を示しても良かった。しかし彼らは何もしなかった。内乱で忙しかったという事も有るだろう、また黒姫一家は比較的業績が好調だとも聞いている。その所為かと思っていたのだがどうやらそうではなかったという事か……。彼らは水面下で動いていた……。
「どういうことだ、マリネスク。何故連中に仕事が来る」
うっ、少し僻みっぽかったかな。マリネスクが肩を竦めた。
「イゼルローン回廊の所為ですよ」
「イゼルローン回廊?」
「ええ」
マリネスクが説明を始めた。昨年、フェザーンの黒姫一家の事務所に仕事を依頼する企業、人間が現れなかったのはフェザーンが非公式に黒姫一家と取引をすれば同盟からの生産財を提供するのを止めると通告したかららしい。どういう立場の人間が通告したのかは知らないが黒姫と取引をする人間が出なかった事を見ればそれなりの立場に在る人間が行ったのだろう。
生産財の品質は帝国製よりも同盟製の方が品質は優れている。ほんの僅かな品質の差で利益に大きな差が出る事も有る。なにより現在使われている生産財が故障した時どうするのか、帝国製に切り替えるのか……。利益を優先せざるを得ない企業にとっては選択は無かっただろう。企業が控えれば人間もそれに倣う。そのため黒姫と取引をする企業も人間も現れなかった。
意図するところは明らかだ。黒姫一家は辺境の一海賊組織で良い、フェザーンにまで進出して大規模な活動など許さない、そう言う事だろう。しかしイゼルローン要塞陥落、回廊の通行権を得た黒姫一家が同盟との間にヴァンフリート割譲条約を結んだことで全てが一変した。
「同盟の生産財はフェザーンの独占物では無くなった、それが理由だったのか……」
「その通りです」
脅しは通用しなくなった。フェザーンが提供しなければ黒姫が提供する。黒姫の影響力は強まる一方だろう。
「他にも理由が有りますよ、船長」
「?」
「企業は辺境に進出したいんです。イゼルローン要塞が陥落した事で辺境の安全性は高まった。ここ数年、黒姫一家が投資してきたせいで辺境は企業が進出しやすくなっている。そして辺境に出るとなれば黒姫との協調関係は不可欠なんですよ。あそこにそっぽを向かれたらどうにもなりません……」
「だからハーマンを使うのか」
「表向きは輸送費が安いという事になっていますがね。あそこの社長は雇われマダムですから黒姫から給料を貰って社長業をしているだけです。オーナーの黒姫は殆ど利益を取っていないらしいんですよ。だからその分だけ輸送費が安いんです」
利益は度外視か……、辺境が儲かっている所為だな。とりあえずはフェザーンでの立場を確立しようと言う事だろう。羨ましい話だ、俺にもそれくらいの余裕が有ればな……。一度でいいから金の心配をせ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ