第十三話 商人達の憂鬱
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は途絶える。ハーマン輸送会社は必至で安定したパートナーを見つけようとした。或いは戦時物資の調達を行おうとした。しかし上手くいかなかった。内乱が始まり貴族からの仕事が途絶えた。武器、食料等の調達の仕事は大手の輸送会社に取られた。そして最悪だったのは貴族連合の敗北により繋がっていた貴族が没落した事だ。経営が傾きかなり酷いと聞いたんだが……。もう一度スクリーンを見て積荷を確認した。リチウム、モリブデン……、レアメタルか……。結構旨味の多い仕事だな。それに比べて俺は……、溜息が出そうだ。
「ハーマンは持ち直したのか、マリネスク」
俺が問いかけるとマリネスクは首を横に振った、違うのか……。
「駄目でした、去年の暮れにはハーマンの株価は底値で投げ売り状態でしたよ。売りたくても買い手が付かない、あのまま行けばハーマンの倒産は確実でしたね」
あのまま行けば……、行かなかったという事だな。
「……つまり、なにか、黒姫が資金援助でもしたのか」
「そうじゃありません。ハーマン輸送会社の株の九十パーセント近くを黒姫が買ったんです。あの会社は今では黒姫の会社ですよ、社長はフェザーン人ですがね」
「よく分からんな、それで仕事が来るのか、いや来るんだろうな、これを見ると」
俺がスクリーンを指で差すとマリネスクが“ええ”と頷いた。
妙な話だ、黒姫一家はフェザーンでは全く受け入れられていない。昨年内乱が起きる前に黒姫一家が事務所を開いた。事業を拡大するためだと聞いたが彼らに仕事を依頼する人間も企業も現れなかった。明らかにフェザーンの嫌がらせだった。誰からも相手にされない黒姫一家に対してフェザーン人は冷笑を浮かべたはずだ。
黒姫一家がフェザーンで受け入れられなかったのは彼らが略奪等の海賊行為を働くからではない。俺の知る限り黒姫一家がその手の蛮行を行ったことは一度も無い。黒姫一家は海賊組織ではあっても犯罪者の集まりでは無いのだ。黒姫一家がフェザーンで受け入れられないのは余りにも彼らが荒稼ぎしすぎるからだった。
フェザーン商人でさえ鼻白む程の稼ぎっぷりが嫌われている。今年のシンドバッド賞を取った商人でも黒姫の前には霞まざるを得ない、バランタイン・カウフでさえ霞むだろう。そう言われるほど彼らは稼ぎまくっている。黒姫はその商才をフェザーン人に嫉まれ疎まれているのだ。無理もないだろう、辺境の小さな海賊組織を僅か数年で帝国屈指の海賊組織にしたのだ。生半可な稼ぎで出来る事ではない。
逆に黒姫の方はフェザーンを拒絶したことは無い。彼らの縄張りである帝国辺境にはフェザーン商船が進出している。しかし彼らが黒姫に補給や取引の面で嫌がらせや拒絶をされたことは無い。フェザーン商船にとって帝国辺境は裕福ではないが極めて安全で商売のし易い地域のはずだ。
フェアーとは言え
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