暁 〜小説投稿サイト〜
Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十五話 喜悲劇への前座
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に『人の振り見て我が振り直せ』というやつだね。僕自身とて感情に左右されないわけじゃないが、彼等ほどではないと信じたいな。

「さあ、謳い上げようじゃないか。我等が主のご帰還なんだ。今宵は宴さ」

まあどちらにせよ今更気にすることではないさ。時間はこれから先もあるに違いないんだから。

「我らはどこでも常に前進する(Wo wir sind da ist immer vorw?rts )
そして悪魔が嘲笑う(Und der Teufel, der lacht nur dazu )
ハ、ハハハハハ!(Ha, ha, ha, ha, ha, ha. )
我らはドイツと ヒトラーの為に戦う(Wir k?mpfen f?r Deutschland
Wir k?mpfen f?r Hitler )
敵は休まずやってくる(Der Gegner kommt niemals zur Ruh' )……ククク、馬鹿みたいだな。祖国もヒトラーももういないのにさ。ハ、アハハハハハハ―――」

笑いが込み上げそれを塞き止める事などせずに僕は笑い続けた。




******




―――同時刻・遊園地付近―――

豪くけったいな夜だとヴィルヘルム・エーレンブルグはそう思いながら月を見上げていた。別に彼は今の現状に文句を言っているわけではない。むしろ彼からすれば今の状況は歓喜にも結びつくような状況なのだ。永遠の仇敵、あるいは宿敵ともいえるシュライバーとの闘争の果てに勝利し、自分こそがハイドリヒ卿の牙に相応しいと示して見せた。そして、今か今かと自身の主の帰還を待ち続ける。そんな中で彼は何か足りないと感じていた。

「いや違ェな。足りないんじゃねえ。むしろ逆か?」

ここ最近の状況が満足しすぎる状況だったといえると判断する。ティベリウスのその忠実さも司狼との殺し合いもシュライバーとの決着も考えて見ればここ数十年無かったことだ。十一年前のあの戦いも有意義だったと言われれば否定できないが絶頂できるものだったか、満足できるものだったかと言われれば否と言うしかない。
言うなれば彼は長い年月の間、ずっと満足できない日々を送っていたのだ。それが突然、まるで転機を得たかのように充実した日々を送っている。そう、つまりは満足できてしまった今に困惑していると言うことなのだ。

「ってこたァ何か?俺は今まで本気で満足できてなかったってことかよ」

それを理解して少々思うところはあるが、概ね満足出来ている今の状況で何か言うほど苛立ちを覚えることは無かった。

「そうと決まれば……」

次に狙うべき獲物は当然のように決まっている。大して目を引くことのない小娘でも女と戦場を駆ける様な腑抜けた男でもこそこそ裏から掻きまわる様な影でもない。本質は自
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ