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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十五話 喜悲劇への前座
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命に従う二人のみ。

「ナウヨックス。今後、我々は何をすれば良い?貴様の指示には従ってやってるんだ。さっさと言え」

他者との会話をあまり好まないカリグラはさっさと次の指示を出せと問いかける。テレジアを城へ運ぶ際もそうだったが、彼は元々一匹狼の気質が強い。僕に従ってるのも現状、単体での独立が出来ないからだろう。でなければとっくに第三勢力として戦っているはずだ。
英雄願望や名誉欲が高く、そのくせ群れることや下につくことを嫌う。求めるのは何時でも頂点。孤独ではなく孤高。嗚呼、何て面倒な考え。
とは言っても別にカリグラだけではない。元々人間は面倒な気質を持つものだし、他の分体も同じだ。

「カリグラ、アナタでしゃばり過ぎじゃ無いかしら?私達は元々彼の所有物なのよ。道具のアナタが主であるアルフレートに楯突くなんて、あなたは私に殺されたいの?」

恐らくは本気で言っているであろうパシアス。自分のことは棚に上げてカリグラを射殺さんとばかりに視線を向ける。
彼女も人の厄介な部分を表している。盲目の愛とそれに比例する依存。
愛も依存も否定はしない。種の存続にはどちらも必要であるし、愛も依存も蓮君やマルグリットのように強みにもなる。重要なのはその質だ。彼女の愛はまさしく憎愛であり、その依存は独占欲の極みにある。まさに業が深い。
他の分体達もそう。
アウグストゥスの根を張った忠誠心も、クラウディウスの悩み続けた故にできた矛盾した敵愾心も、ティベリウスの純真さによる憧れも、ティトゥスの持つ狂った刹那快楽主義も。誰もが内に外にと燃え上がるような極端な感情を持っている。彼らは生きている僕などよりもずっと人間らしく、生きて(死んで)いる。
無論、僕自身にも人間らしさや感情はある。ただそれ以上に彼らが人間らしいだけの話だ。まるで僕自身が持つ感情を映して、それが彼らの感情であるかのようだ。だからこそ宥めるのも指示をするのも僕自身の役目。自らの愛し子に等しい彼等を鏡を見るかのようにして言葉を放つ。

「よしなよ、パシアス。僕は君がそういう風にするところを見たくはないよ。カリグラも自由に動いて構わないよ。僕の指示を聞く必要は無いさ。第八が開くまで……いやその後も自由にして構わないさ」

憮然とした表情で、しかしどことなく自由にして構わないと言われた事に快を隠しきれない様子を見せるカリグラ。そして僕に声を掛けられ、その上心配までしてくれたと大したことのないそれらの行為に頬を染め、目をトロンとぼんやりさせる。まさにその様子は恋する乙女といえるだろう。
本当に下らない。ラインハルトやメルクリウスならともかく、彼等にどう思われようとも関係ないし何も感じない。何せアレ等は僕にとってただの都合のいい駒にすぎないのだから。
だがまあ、戒め程度には役にたったな。まさ
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