十二話 夢の終わるとき
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た。
「え……?」
彼方の小さく見える彼、シュウは自分を追おうともせずに死闘を繰り広げた丘の上に立っていた。そして何より目を引いたのはそんな彼が掲げた右手に輝く、夜の暗い空を照らしだす光。それは紛れもないソードスキルの発光だった。
一体何をしようとしているのか、この世界では唯一の遠距離攻撃である投剣スキルを持ってしても数十メートルの射程が精々。あんな位置から手を出すことなど出来はしない、筈であるのに、アルバはまるで心臓を鷲掴みにされたかのような緊張を感じていた。
「シュウ、まさか……お前……」
その常識を覆す、一つの可能性を脳裏に思い描き瞠目するアルバの視線の先で、夜空に太陽が生まれたかのようなサンライトイエローの輝きがピークに達しようとしていた。
そのスキルの存在に気付いたのはいつ頃だったろうかと、シュウは不意に思い返していた。五十層を過ぎていたのは覚えている、ある日スキルウィンドウを開くとそこにあった見覚えのない表示に首を傾げたのだった。バグの一種かと考えもしたがこのゲームはGM不在、管理者に尋ねることも出来はしない。
情報屋が発行する名鑑にも記載のない事実がその存在を公言するのを憚らせた。それは下手をすれば不特定多数の人間から妬みや嫉みを買いかねない代物だったからだ。密かに練習していた投剣スキルの影響だろうかと考えたこともあったが、この存在を得るきっかけとなったのはそれとは異なる、別の何かだろうという予感はしていた。
突撃槍を逆手に持ち、矛先を前方へ向け、彼方へ走り去っていくアルバの背を見据え視線を集中させる。事を成すまでは決して閉じないと心に決め、目をしかと見開き、小さく見える少年の背を凝視する。周囲の光景がぼやけていく中、彼の姿だけは手を伸ばせば届きそうなほどにはっきりと像を結んでいた。
届かせる、その意思の下に限界まで視神経を働かせていくと、肩より上の位置で引いた突撃槍に山吹の光が生まれるのが感じられた。これで条件は整った、あとは自分がどれだけこのスキルを導けるかにかかっている。すると睨み続けていたアルバが不意にこちらを振り返ったのが確認できた。ソードスキルのライトエフェクトに気付いたのか、気の抜けた表情を浮かべ足まで止めている。
「人に見せるのは初めてなんだ、よく見ておけよアルバ」
持てる限りの筋力値で左足を踏み込み、狙いを定めた少年目掛け、全力を込めたその一撃を投じた。
エクストラスキル無限槍、最上位投撃技《ヴォーダン・ヴルフ》
必中にして必殺の槍の担い手たる主神の名を冠したスキルにより投じられた突撃槍は、太陽の如き光の軌跡を残しながら夜空を一直線に奔り、瞬き一つの間には目標たるアルバのもと
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