十二話 夢の終わるとき
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斬撃と同時にまたシュウの横合いへと大きく踏み込んだアルバは、いまだ白光を纏い続ける両手剣を振りかざし更なる回転斬りを見舞っていく。高速で周囲を駆け回りながら立て続けに斬りつけるアルバの動きにシュウの防御が次第に遅れだした。
「ぐあっ!……」
そのうちにとうとう両手剣の一閃が守りをすり抜けシュウの身に赤々とした仮想の傷跡を刻み込む。続く斬撃こそ突撃槍の護拳で打ち払ったものの相当なダメージが入った筈だ。繰り出した斬撃の数は八。最後の一撃を終え距離を空ける。
スキル使用後に課せられる硬直時間が終わると両手剣を肩に担ぎシュウへと向き直る。初見の技で連撃がいつまで続くか予測できなかったのだろう、ややばかり息を乱しているように見えるシュウは絶好の反撃機会であったはずの瞬間を既に逸していた。
「……今のは?」
「《タンペート・ド・ネージュ》、両手剣最上位連撃技だ。多分敏捷寄りにステータス振ってないと習得できないんじゃねえかな」
未知のスキルについての誰何に答えるアルバ。これまでシュウやトールとパーティを組んでいたときにも見せたことのない。アルバにとって切り札といえる技だった。高い機動性と攻撃力を併せ持つこの技の終わり際をシュウが見切り、彼が得意とする一撃必殺級のソードスキルを打ち込めるか、それがアルバが予想していたこの戦いの分水嶺だった。
そして結果は現状の通りである。盾越しとはいえ強攻撃の連続ヒット、そして一撃入ったクリーンヒットによりシュウのHPは大幅に削られた筈だ、イエローゾーンを割り込みレッドゾーンにまで達しているかもしれない。拮抗は崩れ、状況はアルバ有利へと傾いていた。
しかしそんな状況に至ってもシュウの瞳は戦意を失ってはいない、いつもの構えを取りながらぎらついた鋭い視線をアルバへと送っている。その姿を見てアルバの胸にはある思いが去来していた。――ラストボス、物語の終着点となるMMORPGにあってはならない存在だ。クリア条件が定められたSAOならば第百層のエリアボスこそがその役を担うのだろうが、アルバには自分にとって目の前の少年こそがその代名詞を冠するに相応しいように思えた。
だからきっと、彼を倒せれば、この世界で為せないことはもう何もないと、その一瞬夢想したのだ。絶体絶命であるはずのこの状況でもシュウは己のカウンタースタイルを崩すつもりはないらしく、自分からは攻めようとしない。次に同じ技を受けたとしても防ぎきれるという自信でもあるというのか。
――面白い、と内心で呟きアルバは両手剣を左肩に担ぎなおし、《タンペート・ド・ネージュ》の構えをとる。この技は一撃毎にターゲットの切り替えが有効で、定める狙いを変えることで軌道を微細に変化させることすら可能だ。それにシュウがどう対応して見せるのか、
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