十二話 夢の終わるとき
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見せる。現実とは違い武器防御スキルによるアシストが得られるとはいえ、重心も安定しにくい武器の面積も狭い護拳でそれをなしているのは彼個人の技量としか考えられない。
カウンターを受けずに、三六〇度ほぼ全方位をカバーするこの守りを突破するには以前《聖竜連合》の短剣使いがやって見せたように突撃槍を打ち払って懐に飛び込むのが定石だろうが、生憎アルバの武器は長大な刀身の両手剣。
そんな真似をするには向いてもいないし、よしんば飛び込めたところで剣を振るには近すぎる。しかしこのまま削り合いを続けどちらのHPが先に尽きるかを競うチキンレースに興じるのはリスクが高すぎる。
――まあ、いい頃合かな。
HPの減り具合を見てそんな思考を頭に浮かべると、アルバは両手剣の切っ先を後ろへ流し、左肩の上で刃を垂直寄りに立てて構えた。そうして膝を曲げ溜めをつくると両手剣から耳に響く高い音と共に、眩い白の光が漏れ出す。
ソードスキル発動の兆候にシュウが眉を顰めていた。そのいぶかしむような反応も当然だ、対人戦において動きがスキルのモーションに誘導され、使用後には硬直時間まで発生してしまうソードスキルは連撃に組み込むなりして使用するのが一般的だ。
それなのに距離が開いたこの状況からソードスキルで攻めかかろうとするこちらを怪訝に思うのは普通の反応だ。両手剣には攻撃の後も突進し続けることで距離を空けることが出来る《アバランシュ》というスキルが存在するが今アルバの剣が纏い始めた白い光の色はそれとは異なる技であることを示している。
「――っ!」
両手剣に光が満ちた瞬間、アルバは鋭く地を蹴ってシュウへと向かい駆ける。攻撃を防ぐために掲げられる盾に、自らぶつけるように白光を纏う両手剣を叩きつけていく。剣と盾がぶつかり合い耳に障る金属音が響く。
薙ぎ払うようなその斬撃をシュウはやや押し込まれながらも受けきり、盾の表面を滑らせるように流し払った。反撃に移ろうと疾走の勢いのまま横へ流れていくアルバにシュウが突撃槍を向けるが、その先にあったものを目にしたシュウの動きが止まる。
《アバランシュ》のような突進しながらの薙ぎ斬りを放ったアルバの両手剣、それがいまだライトエフェクトを発生させたまま、その光が減衰していくどころか輝きを増している光景に。意表を突かれた様子のシュウにしてやったりと獰猛に笑ってみせると、アルバはそのソードスキルの本領を発揮させる。
「行くぜ」
「くっ!」
システムアシストに導かれるままに前に出した足を軸として、アルバは自身の身を独楽のように回し振りぬいた両手剣で再び打ち込んでいく。シュウは咄嗟に盾を引き寄せそれを受け防ぐが動きが似た先程の連撃を遥かに上回る威力の斬撃に表情が苦悶へと歪む。
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