第十三話 ドクーガ現わる
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第十三話 ドクーガ現わる
ラングラン軍とシュテドニアス軍の戦いはなおも続いていた。徹底するシュテドニアス軍を追い、ラングラン軍は進撃を続けていた。形勢は最早誰の目にも明らかであった。
それを見たゾラウシャルドはすぐに動いた。指揮官であるノボトニー元帥を即座に解任、そして更迭したのである。その時に彼はこう言った。
「敗戦の将が責任を取るのは当然だ」
だが軍の多くの者はそれに納得はしていなかった。何故ならノボトニーは徹底する軍の指揮をとっており、彼の手腕により多くの将兵が何とかシュテドニアスに逃れることができていたからである。そして彼等の疑念をさらに深いものとしたのは後任の指揮官がゾラウシャルドの息のかかった人物であったことであった。
「大統領は責任を元帥に押し付けただけでは」
「権力闘争の結果か」
軍の内部や議会ではそう囁く者が多かった。しかしそれはゾラウシャルドが大統領の強権で抑え付けてしまっており、表立った発言はできなかった。彼はその間にラセツ達特殊部隊にラングラン軍への攻撃を命じていた。表向きは撤退する主力部隊への援護であった。
しかしそれを信じる者は少なかった。ラセツもまたゾラウシャルドと関係が深くこの作戦がゾラウシャルド本人の考えたものであるだけに余計であった。シュテドニアス軍も議会もゾラウシャルドとラセツに不信感を募らせていたがそれは言えずにいたのであった。
そうしている間にも戦局はシュテドニアス軍にとって劣勢となっていた。ラングラン軍はそれに対して勢いを増すばかりであり戦いはシュテドニアスにとって面白くない状況となりつつあった。
それを最よく感じているのは前線にいる者達であった。とりわけ指揮官達の悩みは深刻であった。
「今は中でゴタゴタ言うてる場合やないんや」
ロドニーは移動要塞の艦橋において周りの参謀達に対してそう言っていた。
「それが上にはわからんのかいな」
「仕方ありませんよ、それは」
参謀の一人が彼を慰めるようにしてそう言った。
「実際に戦場にいるわけではないんですから」
「それや」
ロドニーは彼の言葉に突っ込みを入れた。
「そこが問題なんや」
「はあ」
「国家元首が直接戦争に出るわけにはいかんやろ。ましてや文民が」
「はい」
その通りであった。国家元首が陣頭指揮を執る戦争は上の世界でも精々十九世紀の話であった。ナポレオンの頃までであろう。ラングランではフェイルが陣頭指揮を執ることが多いがこれは特殊な例だ。ましてやシュテドニアスでは大統領は軍の最高指揮官であるが文民である。文民が戦場に出るわけにはいかないのだ。ましてや何かあれば愚行とそしられても文句は言えないのである。
「けれどな、現場に迷惑をかけたらあかんのや。それはわかるやろ」
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