第十二話 火星からの亡命者
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第十二話 火星からの亡命者
「エリカは見つかったか」
火星の上空をエイに似た巨大な戦艦が飛行していた。これはバームの戦艦であるガルンロールである。バームの司令官リヒテルはこれに乗り作戦を指揮しているのである。リヒテルはこのガルンロールの艦橋において周りの者にそう問うていたのであった。
「いえ、何処にも」
スキンヘッドの大男が首を横に振ってそれに応える。彼の名をバルバスという。バームの実戦部隊の指揮官である。
「あの時の混乱により・・・・・・」
「そうか」
リヒテルはそれを聞いて頷いた。
「ならばよい。エリカは死んだ」
「えっ!?」
それを聞いて周りの者は皆驚きの声をあげた。
「リヒテル様、今何と」
「聞こえなかったか」
リヒテルは彼等に顔を向けてまた言った。
「エリカは死んだ。そう申したのだ」
「しかしまだわかったわけでは」
黒く長い髪をした女がリヒテルにそう言って宥めようとする。
「ライザ」
リヒテルはそんな彼女の名を強い声で呼んだ。
「はい」
「エリカもまた翼を持つバームの民だ」
リヒテルは言った。見れば彼等の背には翼がある。まるで天界の住人のようであった。
「その誇りは持っている」
「はい」
「ならば死んだ。おめおめ生き恥を晒すわけもない」
「ですが」
「バルバス」
リヒテルは今度はバルバスに顔を向けた。
「ハッ」
「よもやエリカが地球人共の捕虜になったなどとは思ってはおらぬな」
「それは」
「ならばよい。エリカはこの余の妹だ」
彼はその鋭い目をさらに鋭くしてこう言った。
「ならば生きて虜囚となるような恥は晒さぬ。ならば死を選ぶであろう」
「はい」
「よいな、皆の者。エリカは死んだ」
リヒテルはここで一同に対して言った。
「今後は地球人共への正義の鉄槌、そして我がバーム十億の民の為にその身を捧げよ。よいな」
「ハッ!」
皆リヒテルの言葉に対して敬礼した。リヒテルはそれを受けて頷いてから言った。
「ではこれより地球に向かう。さしあたってはこの火星より逃れた者達を追う。よいな」
こうしてリヒテルの命が下った。彼等はそれに従い出撃する。今バームと地球の本格的な戦いが幕を開けたのであった。
この頃ラー=カイラムは一路火星に向かっていた。その途中アルビオンとの合流を予定している。今彼等はその合流場所に到着した。
「アルビオンはまだか」
ブライトは艦橋においてトーレスとサエグサに問うた。
「そろそろだと思いますけれど」
「先程の通信によるこ間も無くだそうです」
「そうか」
ブライトはそれを受けて頷いた。
「ではここで待っていてもいいな」
「そうですね。そうしましょう」
「うむ」
彼は頷いた。
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