第四話 聖戦士
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「撤退するといったのは貴官ではないか」
「はい」
「ならばそれを援護する者も必要だ。だからこそバイラヴァを出撃させるのだ」
「しかしあれは」
「本部長」
ゾラウシャルドはここで強い声を出した。
「私は一体何だ」
「ハッ」
そう問われて姿勢を正して答えた。
「シュテドニアス共和国大統領であります」
「そうだろう」
それを聞いて満足そうに答えた。
「軍の最高司令官は誰だ」
「大統領であります」
これは至極当然のことであった。ラングランにおいては国王が、共和制であるシュテドニアスにおいては大統領が軍の最高司令官とそれぞれ定められている。ラングランは多分に形式的であるがシュテドニアスではこれはかなり明確に定められている。
「そして軍人の責務もわかっているな」
「はい」
「ならばいい」
ゾラウシャルドは言葉を続けた。
「それではシュテドニアス共和国大統領の名において命じる」
「ハッ」
ロボトニーだけでなくラセツも姿勢を正した。
「戦線をトロイアまで後退させる。その指揮は本部長がとれ」
「わかりました」
「その撤退の援護にバイラヴァを派遣する。その指揮官はラセツ大佐とする」
「ハッ」
ラセツはそれを受けて敬礼した。
「そしてトロイアで敵を迎え撃つ。戦局を挽回にかかるぞ」
「了解」
「わかりました」
ラセツの方が先に答えた。階級はロボトニーの方が遥かに上であるにも関わらず、だ。そしてゾラウシャルドはそれをあえて咎めようとしなかった。ここに三者の関係が露骨に表われていた。しかしロボトニーはそれについては何も言おうとしなかった。口をつぐんだ。
そして三人は別れた。ロボトニーは自室に戻るとすぐに電話を手にとった。
「おう、わいや」
いきなりなまりの強い言葉で返事が返ってきた。
「ジェスハ准将」
ロボトニーはそれを聞いて叱るような声を出した。
「士官学校の時から言っている筈だが」
「その声は」
電話の声の主はそれを聞いて急に慌てだした。
「ロボトニー閣下でっか」
「私以外に誰がいる」
彼は憮然とした声でそう答えた。
「ざっくばらんもいいがもう少し将軍としての態度を保ち給え」
「そんなもんどうでもええと思いますけれど」
「だからいかんのだ、君は」
ロボトニーはまた彼を叱った。
「そんなところは本当に変わらないな」
「おかげさまで。まあまた降格しましたし」
「聞いているよ。だがそれはいい」
「はあ」
「また昇格すればいいだけだからな」
彼はそれについては特に何も言わなかった。話は別のところにあった。
「そちらの状況だが」
「はい」
電話の主も態度をあらためた。
「かなり深刻な状況のようだな」
「ええ。また負けましたわ」
「やはりな。最早
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