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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
9.新しい出会いT
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9.新しい出会いT

 104訓練分隊は総戦技演習に合格し戦術機教練に入った。しかしそこで問題が一つ浮上する。巧の成長速度が他の訓練兵と隔絶していたことである。シミュレーター訓練とはいえ戦術機の操縦は難しい。筐体の激しい揺れと強化装備で再現される加速Gの中、生身とは反応や精度に差がある機体を自分の体のように寸分たがわず動かす。単純に歩いたり走ったり、物をつかむという行為でさえ思うようにいかない。間接思考制御によるサポートがあっても操縦桿とペダルだけで人型の兵器を制御するというのは相当な錬度が必要なのである。
 その点は巧も他の訓練兵と変わらなかった。しかし巧はSES計画で培われた衛士適正によって筐体の揺れや、加速Gなどの影響が極めて少なく、柳田から聞いていた操縦経験から通常よりも圧倒的に早いペースで訓練課程をこなしていったのである。そして実機連携の訓練に入る段階に入って人事部から一つの命令が下った。

「遠田訓練兵。貴様は明日より厚木基地第二連隊所属の中隊、パンサーズに臨時少尉として配属されることになった。本来なら多少の訓練課程の違いで部隊を変えるなどありえんが、大陸の戦況を鑑みるに帝国本土が戦禍に晒される日は遠くないと上層部では判断している。優秀な衛士が一人でも欲しいのだ。」
そう、ユーラシアの戦況は極めて厳しい。1990年にインドのボパールに十三番目のハイヴが立てられ、BETAは本格的に東進を開始した。ボパールハイヴから出てくるBETAによってインド戦線は後退を続けており、統一中華戦線とソ連軍の共同戦線もカシュガルハイヴから東進してきたBETAの物量に押されている。
そして帝国議会では大規模な大陸派遣を決定したが、入ってくる情報は絶望的なものばかり。このままいけば十年以内に大陸は制圧され、帝国本土が戦禍に巻き込まれることだろう。そのとき中心になるのは巧と同世代の若者である。ゆえに今の帝国は若く優秀な人材の発掘に躍起になっているのである。

「パンサーズは正規部隊ではあるが、今は新任衛士との連携訓練をメインにしている。貴様は未だ訓練兵の身であるが、その成長は目覚ましいものがある。訓練部隊ではなく正規部隊に配置換えするのはそういった理由だ。」
「質問の許可をいただけますか?」
「許可する。何だ?」
「自分にそれだけ期待していてくれるというのは嬉しく思います。しかし訓練校に入ってまだ半年程度の私が正規部隊に配属されるとなると、パンサーズの方々は快く思わないでしょう。連携訓練に差し障るのではないでしょうか?」
 巧としては田上達104分隊と一緒に任官したいと考えていた。初めての仲間、そして共に総戦技演習を乗り越えた戦友として特別な思いを持っていたし、そこから敢えて抜け出して巧を快く思わないであろう正規部隊に臨時編成されるのは正直嫌だった
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