第7話 2つの誓い
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「……帰ってきたっ!」
黄昏時を過ぎ、段々と夜の闇が太陽の光を覆い始めるころ、庭で純吾達の帰りを待ち続けていた忍たちは夕闇を背負ってこちらに向かってくる点を見つけた。
初めは影を背負っていたため姿が見えなかったが、段々とそれが人らしき影を乗せた龍の様な獣であると分かってきた。
「純吾君、アリサちゃんそれに……すずかっ!!」
庭に降り立った龍の背から降りてくる人影に向かって忍は走り出す。段々と大きくなる人影の中に、最愛の妹の姿を見つけた瞬間、歓喜が自分の内側から爆発したかのように湧きあがるのを感じた。
「あぁ…本当に、本当に無事で良かった」
少し朦朧とした様子の妹を胸にひしと抱きしめ、その髪に頬を寄せた。今胸の中にある小さな体が温かい、そんな当たり前の事が奇跡のように大切に思えてくる。
ひとしきりすずかを抱きしめた忍は妹の柔らかい髪の上に置いていた頬をあげ、近くにいたアリサの方へ視線を向けた。
「アリサちゃんも、無事で本当に良かったわ。どこも怪我はない?」
「…っあぁ! え、えぇとはいっ。大丈、夫だと思います」
ぼんやりとしていたのか、忍の声に酷くびっくりしたような返事が返ってきた。今日いきなりもの凄い恐怖と驚きを感じて呆然自失となっていたためだろう、普段の活発な彼女からしたら、滅多に見られない反応だった。
本当は不謹慎なのだが、彼女も怪我ひとつなく帰ってきた事への喜びから、ついつい忍は小さく笑ってしまった。
「ふふっ。ごめんなさい、どうしても嬉しくて……
すずかもアリサちゃんも疲れているだろうから、屋敷の中へ先に入っててもらえるかしら?」
そう言って後ろに控えていたノエルとファリンに彼女たちを屋敷へと案内させた。
後に残ったのは、仲魔を帰還させていた純吾だけ。アリサとすずかが屋敷の扉をくぐるまでそれを見つめていた忍は、ゆっくりと純吾へと向き直り、深々と頭を下げた。
「……純吾君。2人を助けてくれて、本当にありがとう。あなたがいなければ、こんなに早く、安全に助け出す事は出来なかったわ」
「……ジュンゴだけじゃない。仲魔と、【ニカイア】のおかげ」
礼を言われ慣れていないのか、純吾は頬を少しだけ赤くしてニット帽を目深にかぶりなおしながら答えた。
ぶっきらぼうな言い方だったが、素直な気持ちがはっきりと分かる答え。それを聞いた忍は片手を口元にやりくすりと笑った。
鋭い目線を目深にかぶったニット帽で隠して悪魔を従え、そして、凄惨な過去を持つ。
今まで得ていた情報からとても陰険で、暗いような印象を受けていた忍だったが、こんなにも素直で可愛らしい反応をするのかと、いい意味で裏切られたことについ嬉しくなってくる。
彼に秘密を打ち明けてみようと考えた
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