第六章 贖罪の炎赤石
第三話 士郎危機一髪!?
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体が治ったら、あなたに会いに行ってもいいですかっ!?」
刀を人形のように胸に抱きしめながら、不安気に揺れる目で見つめてくるカトレアに、士郎は苦笑を浮かべると、体ごとカトレアに向き直った。
「さっきも言っただろう。会いに来たければ何時でもくればいい。俺は何時でも君を歓迎する」
「……はい、わかりました」
ぎゅっと刀を抱きしめ、顔を俯かせるカトレアにそれじゃと背を向けた士郎が再度歩き出す。去ってゆく士郎の背に、カトレアは今度は何も言わなかった。士郎の姿が完全に見えなくなると、カトレアは壁に背を預け、どこか焦点が合っていない目を天井へと向ける。
「……ルイズが変わったのは、きっとあなたのおかげなのでしょうね…………」
父や母、姉に怯えていつもビクビクしていたルイズ。
魔法が使えず、常に不安気で、自分に自身のなかったルイズ。
それが、あんなに力強く、自信気に……。
子供の頃から怖がっていたお母さまにも、あんなに毅然とした態度で……。
ゆっくりと顔を落とすと、刀の柄頭に額を当てる。そっと撫でるように手に持つ刀を見つめたカトレアは、自分に言い聞かせるように小さく口の中で呟いた。
「……わたしも……変われるでしょうか……」
ルイズは中庭の小舟の中、一人敵陣の真ん中に取り残された兵士のようにひっそりと隠れていた。
微かに自分を探す使用人たちの声が聞こえてくる。途切れなく聞こえてくる声に、小舟の中から脱出する機会が得られない。動くに動けない状態に、ぎりぎりと歯ぎしりをする。
「まったく、何考えてるのよ父さまは……ッ!!」
ぶつぶつと父親の文句を言いながら、ルイズはゆらゆらと揺れる小舟に揺られている。段々と近付いてくる使用人の声に、小舟の中に置いてある毛布で身体を隠す。いくら城の中から死角になる場所であるからといって、あまり近づかれると気づかれてしまう。
逃げるように、隠れるように毛布を身体に引っ被っていると、子供の頃が思い出される。
小さい頃は、嫌なことがあればよくここに来てはこうして隠れていたものだった。そうしていると、段々と気持ちが収まってきたのだけれど、今は、何故かそんな風にはならない。
どうしてだろう?
昔のわたしが、ここで気持ちが穏やかになったのは……多分、それは……ここがわたしの居場所だったからだと思う……。
家の中の何処にも居場所がないわたしと、誰にも見向きもされない中庭の小舟……。
わたしに優しいちいねえさまの所も気持ちが穏やかになったけれど……病弱でも魔法が使えるちいねえさまに時として嫉妬してしまうこともあったから……素直にそこに行くことは出来なかった……。
だけど、わたしは変わった……シロウに出会って。
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