第六章 贖罪の炎赤石
第三話 士郎危機一髪!?
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でもくればいい。俺は何時でも歓迎するぞ」
「ふふふ…………そう、ですか」
士郎の言葉に声を出して笑ったカトレアだったが、浮かべる笑みの中に、不意に悲しげな色が混ざった。微かな悲しげな色を見逃さず、士郎が心配気にカトレアを覗き込む。
「気分でも悪いのか?」
「……大丈夫です……と言ってもあなたは信じませんよね」
「当たり前だ。部屋まで送ろう」
「……部屋まで送って、どうするつもりですか?」
「どうするって……どうもしないぞ」
見下ろしてくる士郎の鼻を人差し指で押し返すと、士郎は逆らうことなく指の動きに従う。口の端を微かに曲げながら顔を曲げながら頬をかく士郎に、カトレアは一瞬ハッとするほどの愛おしげな色が帯びた目を向けたが、すぐにそれを霧散させた。そのため、士郎が顔を戻した時、カトレアの瞳に浮かんでいたものに気付くことはなかった。
「ふふ……冗談です。わたしは本当に大丈夫ですから。それよりもルイズのことです」
「ルイズがどうした?」
「ルイズは今、中庭にある池に浮かぶ小さな小舟の上にいます。逃げる準備はわたしが整えますから、シロウさんはルイズと一緒に城の外に出てください。街道に馬車を用意しておきますから」
いつもどおりの柔らかい笑みを浮かべたまま、脱出計画を口にするカトレアに、士郎は探るような目を向ける。
「逃げる、か……カトレアはそれでいいのか?」
「……わたしも、ルイズが戦争に参加することは反対です」
「それなら――」
士郎の言葉を遮るように、拒絶するようにカトレアが声を上げる。
「でも、ルイズが決めたことですから」
「……そう、か」
カトレアの言葉に顔を俯かせた士郎は、ゆっくりと顔を上げてカトレアに頷いてみせた。
「……わかった。馬車はいいが御者は――」
「もちろん、そこにいるメイドさんにお願いしますわ」
士郎がシエスタのことを伝えようとするのに先んじ、カトレアが士郎が背にするドアを指差しながら頷く。士郎は察しのいいカトレアに笑いかけると、「ああ、そういえば」と呟きながら外套の裏に手を伸ばす。
士郎は外套の裏から目的のものを取り出すと、不思議そうな目を向けてくるカトレアに差し出した。
「これを君に渡そうと思っていたんだ」
「これは……剣……ですか?」
士郎が手にするものは、反りのある細長い棒のようなもの。長さは六〜七十サント、幅は三〜四サントはある。
首を傾けながら伸ばしてくる白い手の上に、士郎は手に持つ刀を載せた。手にした想像以上のずしりとした重さに、カトレアの足がたたらを踏む。
「これは?」
「刀と呼ばれる剣の一種だ」
「……カタナ……ですか」
剣という言葉に、カトレアは複雑な視線を手にした剣に落とす。
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