第六章 贖罪の炎赤石
第三話 士郎危機一髪!?
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影が見えた。士郎の手が頭に乗った状態のカトレアも、士郎と同じ方向を見て、ポツリと呟く。士郎はカトレアに顔を向け、ぽんぽんと頭を叩くと、ゆっくりと背中を向け始めた。
「……っん」
背中を向けた士郎の身体に、カトレアが抱きつく。
背中に感じた柔らかな感触に、士郎は足を止めると、肩越しに背中に抱きつくカトレアに振り向き、
「どうし――んむっ?!」
「ちゅ……む……ん」
背伸びをしたカトレアの唇に迎えられた。柔らかく、暖かい感触。微かに歯が当たる感触に、ぎこちなさが見える。士郎はカトレアの突然の行動に驚いたが、しかし拒むことはなかった。
どれだけの間、続けていたのだろうか……カトレアがゆっくりと士郎から離れていく。
感触を確かめるように、自分の唇を撫でたカトレアは、赤く染まった顔で士郎に笑い掛けた。
「お礼です……色々な……本当に色々なことに対するお礼です……それでは、また……」
小さく手を振るカトレアに呆然とした顔を向けていたが、唐突にふっと笑みを浮かべると、士郎は頭を下げ、顔を前に向け駆け出していく。
あっと言う間に小さくなる士郎の背中を見つめながら、カトレアは未だ赤く染まったままの顔を両手で隠すようにすると、ずるずると木の根元に座り込んだ。
「……そっか……わたし……」
心臓がばくばくと音を立てて鳴っている。顔からは火が吹き出そうだ。胸の中にモヤモヤとしたものが渦巻き、今にも叫び出したくなる。それを身体を小さく丸めることで押さえ込む。
熱く、濡れた息を長く吐くと、顔から手を外す。
そこにはもう、士郎の姿は影も形もない。
そっと白い指先で唇に触れると、
「……あなたに……恋してしまったのですね……」
目を細め、見るものを魅了する、柔らかく幸せそうな笑みを浮かべた。
「……シロウ……さん……」
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