第六章 贖罪の炎赤石
第三話 士郎危機一髪!?
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いのかしら」
誰に言うでもなく呟いた言葉。返事など期待どころか考えもしなかった言葉に、
「会いたいなら会いに来ればいいだろ」
「……え?」
太陽の光を遮りながら現れた影が答えた。
「シ、ロウさん?」
「ああ」
「どう、して?」
「目には自身があってな。もしやと思って辺りを見渡したら君を見つけてな。君が助けてくれたんだろ」
信じられないものを見るかのように、カトレアが士郎を見上げる。
呆然と見上げてくるカトレアに、士郎は苦笑いを浮かべ、カトレアに話しかけた。
「まったく無茶をする。自分の身体のことはわかってい――」
「何をしているんですかシロウさんっ!!」
「うおっ?!」
突然怒り出したカトレアに、今度は士郎が呆然とした顔になる。カトレアは士郎に指を突きつけ、怒涛の如く責め立てにじり迫っていく。
「お父さまは一度決めたことは簡単には変えません! 早く逃げ出さないと、本当に帰れなくなるんですよ! ルイズを逃がしたとしても、貴方が捕まっては意味がないでしょう! もうっ! 一体何をしているんで――あうっ!」
「お前を叱るためだ」
迫り来るカトレアを、士郎はカトレアの頭を軽く叩くことで止めることに成功した。
「何をしているはこっちのセリフだ。お前こそ一体何をしている。いくら『大典太光世』を渡したからといって、直ぐに完治するわけじゃないんだぞ。確かに助かったのは事実だが、それでお前が……おい、どうした?」
頭を両手で押さえながら呆然と見上げてくるカトレアに、こんこんと説教する士郎だが、全く何も反応がないカトレアの様子に、訝しげな視線を向けると……。
「ッ!!! すっ、すすすまない! ちょっと強すぎたか!?」
「え? あ、あれ? 何で?」
士郎はポロポロとカトレアの大きな瞳から、涙がこぼれ出すのを見て、慌ててカトレアに謝り出す。カトレアは士郎の様子で、自分が泣いていることに気付くと、首を傾げながら、手の甲で涙を拭き始めた。
「あ、その、痛くはないんです。本当に痛くは……ただ……ちょっとビックリしちゃって……初めて……でしたから」
「初めて?」
「叩かれたのは、その……初めてなんです。だから、ちょっと驚いてしまって」
「そう、か……痛くはないか?」
「……はい」
「「…………」」
士郎が痛みを誤魔化すように、カトレアの頭を撫で始めた。
二人の間に沈黙が満ちる。
視線が絡み合い、士郎の頭を撫でる手が止まり……。
「ん? どうやら追いついてきたようだな」
「え? あ……そう、みたいですね」
「俺も……もう行くか。じゃあ、またなカトレア」
微かに聞こえてきた声に、士郎が門に向かって振り返ると、土煙を上げながら迫ってくる人
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