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第八話 裏 (なのは担任、高町家)
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◇ ◇ ◇
「なのははもう寝たの?」
「そうみたいだな」
お風呂あがりなのだろう。タオルを頭に巻いた状態で桃子がリビングへやってきた。
時刻は夜の10時。小学生が寝るには十分な時間帯だろう。
答えた士郎は、テレビでサッカー中継を見ているようだが、意識は明らかにサッカーには向かっていないように思える。
たぶん、考えていることは桃子と同じことだろう。
「なのはのこと?」
ぴくん、と士郎が反応した。おそらくそうなのだろう。いつもは真剣に見ているサッカーでさえ上の空になるぐらいなのだから、よほど心配らしい。
「ああ」
そう桃子の言うことを肯定すると、士郎は、テレビを消した。
先ほどまではサッカーの実況が響いていたリビングは一瞬にして静寂に包まれた。
「なのはは、友達が出来たんだろうか?」
「分からないわ」
そう、それは桃子も士郎も把握していなかった。当然、注意は払っている。
だが、それでも限界がある。日中は誰もなのはに注意を払えない。
なぜなら、残念なことも桃子も士郎も一般的には社会人だった。社会人には、当然のように責任がある。
優先されるべきは心情的には家庭だが、立場的には社会なのだ。
桃子でいうとパティシエという仕事。桃子一人がいなくなれば、当然他のスタッフの負担が大きくなる。何より、桃子のお菓子を食べにきてくれているお客さんに申し訳ない。
ただでさえ、なのはが不登校になったときには連続で休みを貰ってしまったのだ。これ以上の苦労はかけられない。なにより、なのはは表向きはいつもどおりなのだから、心配だという理由でオーナーの妻が休めるわけがない。
士郎は士郎で、サッカークラブの監督兼オーナーだ。もしも、これが、趣味の遊びならまだ家庭を優先しただろう。だが、月謝という形でお金を貰っている以上、お金を払っている親御さんたちに士郎は責任がある。だから、サッカークラブのほうを放置するわけにはいかない。
だが、そんなものは建前だということを桃子も士郎も自覚していた。
「……どうすればいいんだろうな」
結局、そこに行き着く。
彼らには三人の子供がいる。恭也、美由希、なのはの三人だ。
だが、恭也の幼年期は士郎が武者修行で連れていたため、育てたという感覚が薄い。美由希は、養子だ。しかも、なのはのようなことはなかった。
実質、なのはが彼らにとってはじめての子育てと言っても過言ではない。
だからこそ、分からない。こういうとき、どうしたらいいか。
不登校になったときは、学校にいじめがあるんじゃないか、と思い、学校に赴いた。
結果は、不発だったが。代わりに得られたのは蔵元翔太という男の子からの
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