本編前
第八話 裏 (なのは担任、高町家)
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だからこそ、彼女は高町なのはを傷つけられないように見守りはするが、友情を促したりはしない。
それに加えて、彼女が出来ることといえば、せいぜい、友達の作り方を教えるだけだ。
ああ、丁度いい。ゴールデンウィークに入る前に少しだけ教育しよう。ほんの少しの勇気で友人を作る方法を。
確かに教え、育てることは自分の仕事なのだから。
ゴールデンウィークに入る直前の平日。その日の第二学級の日誌の所見欄には一行だけ記された。
高町なのは経過報告:異常なし。
◇ ◇ ◇
パチパチパチと火が爆ぜる音がする。
三日月というには少し太りすぎた月が浮かぶ夜。
周りは深い森で囲まれた河の近くのテントが二つ張られた近くで二人の男女が燃える火を見ながら座っていた。
一見すると恋人同士の語らいのように見えるが、彼らの腰にある二刀の小太刀それを否定していた。
彼らの目的は恋人同士の語らいではない。互いをぶつけ合う剣術の修行だ。
だが、その目的も今日は店じまい。後は眠るだけ、となった後に少しの反省会が終わり、今はその余韻を味わっているところだ。
「………なのは、友達できたかな?」
唐突に女―――高町美由希が男に問う。
「さて、な。俺には分からない」
パチパチパチと燃える焚き火に木を加えながら男―――高町恭也は答える。
彼らが心配しているのは末妹の高町なのはのことだ。彼らの末妹である高町なのはは一時期外に出てこなかった。自分の部屋に閉じこもり、朝食や昼食、夕食のときでさえ出てこなかった。
彼らも心配はしていたのだが、如何せん対処法が分からなかった。話しかけても答えが返ってこない以上、解決方法は何もなかった。
何度も家族会議が持たれ、原因を探ったが、原因という原因は見つからず、原因が分からないからなんて理由で可愛い末妹を放っておくなんてことは彼らの選択肢にはなく、心労だけが溜まっていく日々だった。
彼らに光明を与えたのは、なのはの同級生と名乗る蔵元翔太という男の子だったらしい。
生憎、美由希と恭也は学校に行っていたため、彼と出会っていなかったため、両親から聞いたに過ぎない。
彼曰く、なのはには友達がいないらしい。
そのときの驚愕は筆舌しがたい。
少なくとも彼らから見て、末妹は、友達が出来ないような性格じゃなかった。我侭も言わず、自分のことは出来るだけ自分でする少し大人びた可愛い末妹。自分たちを頼ってくれないのが少しだけ寂しかったが、それでも外に言えば自慢の妹だ。
そんな妹に友達が一人もいないなんて家族の誰も想像できなかったに違いない。
事実、父と母も言いづらそうに、信じられないとも言うようにそれを口にしたの
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