無印編
第二十一話 裏 (すずか、アリサ、なのは)
[10/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
せっかく翔太との昼食なのにあまり楽しいとは思えなかった。
くそっ、くそっ、と悪態づくが、終わってしまったことを悪態づいても仕方ないのだ。それよりも、なのはの意識は放課後へと向いていた。今日も翔太と一緒にジュエルシードの捜索だ。魔法の訓練でもいい。どちらにしても、翔太と二人の時間であることには代わりなのだから。それだけを思い、なのははお昼の出来事でささくれた自分の心を慰めていた。
さて、なのはの予想通り、放課後はアースラで魔法の訓練とジュエルシードの回収が待っていた。翔太と一緒にいられうrのは十分嬉しいのだが、相変わらずいる邪魔者が余計だった。クロノ然り、武装隊の面々然りだ。魔法の訓練もなのはがいれば十分なのに。ジュエルシードの封印だって、なのはだけでいいのに。そう思うのだが、翔太がクロノは管理世界の執務官だから。武装隊は護衛が必要だよ、というのだから仕方ない。翔太が言わなければ、彼女は絶対に頷いていなかっただろうが。
そんな日々が続いたある日、ついに最後のジュエルシードの回収が始まった。場所は海底。翔太の防御魔法によって覆われたまま海を潜るのだ。いつもは武装隊の面々が一緒だが、今日は本当に翔太と二人だけの空間。それがなのはにとっては本当に嬉しかった。
ぽちゃんという音を残して、なのはと翔太を包んだ防御魔法が海に沈む。久しぶりに本当の意味で、翔太と二人だけの空間に立ったなのはの心臓はドクンドクンと自分の心臓ではないかのように高鳴っていた。封時結界と海中ということもあってだろうか、音もなく水面から差し込む明かりだけが辺りを支配していた。本当にこの世界はなのはと翔太の二人だけの世界であると見まごう空間だった。
それが嬉しくて、自分の望みが叶ったようで、思わずなのはは口にしていた。
「なんだか、二人だけの世界みたいだね」
「そう、だね」
そのなのはの言葉に答えた翔太の表情はどこか微妙だった。
もしかして、翔太は自分と二人だけの世界は嫌なのだろうか。自分はこんなにも嬉しいのに。自分の歓喜の十分の一だけも伝えられたら、なのはがどれだけ喜んでいるか分かってもらえるのに、となのはは思ったが、いくらなんでもそれは無理だった。だから、なのはは直接聞くことにした。
「どうしたの? ショウくんは、こんなのは嫌?」
「う〜ん、嫌というわけじゃないけど……寂しいよね」
「……そうなんだ」
少し考えた翔太の答えを聞いてなのは考える。
―――嫌じゃない。つまり、ショウくんは、私と一緒にいるのは嬉しいんだっ!
それだけでなのはの心は打ち震えていた。翔太がかつてのなのはよりもなのはを受け入れてくれているような気がして。あの本当の友人になった頃よりも親密になったような気がして。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ