無印編
第二十一話 裏 (すずか、アリサ、なのは)
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スパイスは、想いですよ―――なのだから。だからここ、翔太に食べてもらうために作ってきた料理が彼女の料理に負けるはずがないとすずかは思っていた。
結局、お互いに意地の張り合いのような形になってしまい、翔太からはおいしいという一言はもらえたものの彼女との決着がつくことはなかった。
そして、その日の夜。すずかはノエルから借りた『今日のおかず百選』という本をベットの上でうつ伏せになりながら読んでいた。明日からはどんな料理を作ろうか、と悩んでいたのだ。時期の悪いことにもうすぐゴールデンウィークだ。ゴールデンウィークの後半には、翔太たちと一緒に温泉旅行に行くことが決定しているが、それまでは、翔太と会えない日々が続き、お弁当も食べてもらえないのだ。だからこそ、厳選しなければならない。
もっとも、ゴールデンウィークが終わった頃には、彼女の用事も終わっているだろうし、今日のように焦る必要はないだろうが。
だから、安心してすずかはゴールデンウィークまでの間に翔太に食べてもらう料理をページを捲りながら考えていた。できるだけ、おいしそうな、翔太が喜んでくれるようなものを選びたかった。
「ふふふ、ショウくん、喜んでくれるかな?」
彼のおいしいよ、という言葉を思い浮かべながらすずかはページを捲る。
そのすずかのにやけきった笑みを窓の向こう側で煌々と太陽の光を反射する白銀の月だけが見守っていた。
◇ ◇ ◇
アリサ・バニングスは、その日も夜になると自室にあるカレンダーの今日の日付にバツ印をつけていた。カレンダーの最後のバツ印の一週間後には、丸印が三つ並んでいる。この日はゴールデンウィーク中にアリサが計画した親友との温泉旅行の日付である。その日が楽しみでアリサは、その計画を立てた日から一日千秋の思いで指折り数えていた。その旅行もあと一週間に迫っていた。
しかし、残念なことに、その旅行までの一週間はゴールデンウィークで親友とはまったく会えない日々が続くのだが。それでも旅行を思えば、寂しくない、とアリサは旅行のことを思い、笑顔のままばふっとベットにダイブした。
ベットにうつ伏せになったアリサが考えることは温泉で何をしようか、ということである。枕元に転がっているパンフレットは既に何度も確認済みである。行く予定になっている旅館には、温泉はもちろんのことながら、露天風呂やゲームセンター、スポーツセンターなどもあるし、近くには温泉街もある。二泊三日という予定ではあるが、予定を立てていなければ、あっという間に時間が過ぎてしまうだろう、とアリサは考えていた。
あっちに行こう、こっちもいいかもしれない、と考えているアリサだったが、親友であるすずかと翔太と一緒ならば、どこでも楽しいのだから問題な
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