無印編
第二十一話 裏 (すずか、アリサ、なのは)
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食べて欲しい。だが、そんな我侭も簡単にはいえなかった。すずかの目的は、仲良くなることであり、我侭を言って嫌われては本末転倒だからだ。だからこそ、すずかができる唯一の抵抗はせめて、明日の約束を取り付けることだけだった。もっとも、翔太用に作ってきたおかずの処理にも困るのだが。
そして、約束を取り付けた日の昼食。翔太は約束を違えることなく、すずかたちと一緒に昼食を食べてくれた。ただし、お邪魔虫つきではあるが。
彼女は、翔太が食べる場所に選んだ中庭にいた。しかも、それは偶然ではなく、まるで翔太と約束したように翔太の姿が見えると座っていた石段からわざわざ立ち上がり、彼に向かって手を振っていた。そんな彼女の視界にすずかたちが入ると、まるで転がる石ころを見るような目ですずかたちを見ていた。だが、それも一瞬のこと。今ではもう翔太しか目に入らないといわんばかりに彼の隣に子犬のようにじゃれ付き、自分の隣に座るように促していた。
そんな彼女の態度にムカッと頭にきてしまうのは仕方ないことだと思う。ずるい、という感情が胸のうちを占めてしまうのも。
最初に約束したのはすずかたちであり、彼女はおまけのはずなのだ。それなのに、まるで最初から自分だけしか約束していないように振舞うのだろうか。それが腹立たしくて、昨日からずっと新しい料理を練習して、食べてもらうことを、感想を貰うことを楽しみにしていたすずかが思うことはたった一つだけだった。
―――邪魔だなぁ。
そう、翔太の隣に座ってお弁当を開こうとしている彼女は、すずかにとってただの邪魔者でしかなかった。しかも、あちらも似たようなことを思っているのだろう。まるですずかとアリサがいないように振舞っているのだから。いや、それどころか、彼女の冷たい視線は、まるでココから消えてくれ、といわんばかりの敵愾心むき出しの視線だった。
そんな彼女の態度にすずかはなるほど、と納得した。
―――遠慮なんていらないよね。
もしも、相手がそれなりの態度であれば、すずかも自重するつもりだった。お弁当のおかずは勧めるつもりだったが、それなりの距離感で昼食を過ごそうと思っていた。だが、相手の態度を見るにそんなことをする必要はないようだった。
だから、すずかは彼女に対抗するように空いていたもう片方の翔太の隣にくっつくように腰を下ろした。それを見て、彼女は驚いたように目を見開き、非難するような視線を送ってきた。もしも、すずかが普通の人間であれば、悪寒の一つも走っていたかもしれないが、しかしながら、すずかは吸血鬼だ。だからこそ、すずかは真正面からその視線を受け止め、逆に相手に非難するような視線を送った。
翔太を挟んで、まるで火花が散るような視線のぶつけ合い。お互いがお互いに相手を邪魔と思ってい
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