無印編
第二十一話 後
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く叫んだ。
「翔太っ! フェイトを抱いて下がってっ!!」
ガルルルルと彼女が本来の姿である狼のように吼え始めたのを見て、僕は尋常ではない事態になることを悟って、眠そうにしているアリシアちゃんを抱いて、アルフさんの後ろに庇われるような位置に移動した。
それと同時にアルフさんが睨んでいたある一点が、蜃気楼のようにゆがみ、紫色の魔力光によって部屋が包まれる。その魔方陣はクロノさんとの魔法の練習中に見たことがあった。僕の記憶が確かであれば、ユーノくんが実演してくれた転移の魔方陣だ。僕がそれを確信すると同時に、転移の魔法で転移された人物が姿を現す。
「こんばんはぁ」
魔方陣から出てきたのは二人。一人は、紫の髪の毛を腰の辺りまで伸ばし、露出の高い服に身を包んだ女性。魔女という言葉を体現したような女性だった。そして、もう一人はその魔女に仕えるような形で半歩後ろに立っていた猫耳を生やした女性だ。
魔女のような女性は、にぃというような意地の悪い笑みを浮かべたまま、僕を庇うように立っているアルフさんを一瞥すると面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「あら、ゴミの使い魔じゃない。どこかで野垂れ死んでいるかと思ったのに、こんなところで生きているとはね」
ゴミ? どこかで、聞いたことがあるような表現だな……、と僕が思い出していると、突然、僕の胸に抱かれているアリシアちゃんが、自分自身を抱くようにきつく両手で抱きながらガクガクと病気のように震えている。
「ど、どうしたの? アリシアちゃんっ!?」
突然、現れた女性も気になったが、それよりも、義妹であるアリシアちゃんのほうが気になった。明かりの少ない僕の部屋ではあるが、それでもはっきりと分かるぐらいにアリシアちゃんの顔は真っ青になっていた。しかも、眠そうにしていた目は今でははっきりと見開かれ、何かを呟いている。
何を呟いているのか、と耳を寄せようとしたのだが、それが許されることはなかった。
「……アリシアですって? 坊や……今、それをアリシアと呼んだの?」
心臓が止まりそうなほどの怒気を僕に浴びせながら、魔女の女性は問う。だが、僕には彼女の問いに答えられなかった。答えられるほどの余裕を持つことができなかった。アルフさんが庇ってくれているにも関わらず、それを物ともしない彼女の怒気が酷く恐ろしかった。
「坊や、それをアリシアと呼ぶの? 巫山戯ないでっ!! それは、ゴミよっ!! アリシアにも、人形にもなれなかったただのゴミっ!」
僕には、彼女が何を言っているか、分からなかった。だが、魔女の言葉を聞いてさらにアリシアちゃんの震えが大きくなった。さらに自分を護るように二の腕まで回された手は自分を逃がさないようにきつく握られており、爪が食い込んだのか
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