無印編
第二十一話 後
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母さんの反応を見て、僕はほっと胸をなでおろした。アリサちゃんのあのときの顔をみれば、とてもじゃないが、行けないとは口に出せなかったからだ。電話の内容如何では、反対される可能性も考えたが、そもそも、誘ってきたのはアリサちゃんのほうなのだ。両親に対しても説得ができていると考えるのが妥当で、母さんが言い出したのも礼儀的な意味だろう。
「ねえ、お兄ちゃん、温泉ってなに?」
僕がそんなことを考えていると、ご飯を食べながら僕と母さんの会話を聞いていたアリシアちゃんが不思議そうに聞いてきた。
「ん? ああ、アリシアは知らないのかねぇ? 大きなお風呂のことさ」
「へ〜、大きなお風呂かぁ」
アルフさんの言葉からきっと僕の家のお風呂をそのまま大きくしたような光景を思い浮かべているのだろう。
本当なら僕が答えようと思っていたのだが、それよりも先にアリシアちゃんの隣に座っているアルフさんが、アリシアちゃんに答えていた。それを聞いたアリシアちゃんは何かを感心したような声を上げていた。アリシアちゃんが知らないのは、管理世界という別世界から来たからと思っていたが、それよりも、アルフさんが知っている事実に少しだけ驚いた。
「ねえ、お兄ちゃん」
やけにきらきらと期待の篭った視線で僕を見つめてくるアリシアちゃん。それだけで、次の言葉が容易に想像することができたが、言葉を割るのも悪いと思い、そのまま続く言葉を聞く。
「私も、行きたいなぁ〜」
「それは、無理」
アリシアちゃんの言葉は予想通りすぎて、僕は間髪いれずに不許可の言葉を口にした。が〜ん、とでも言いたそうにコミカルにしょげるアリシアちゃんを見て、少しだけ罪悪感に駆られるが、こればかりは仕方ないことである。
もしも、これが僕らだけで立てた個人的なもの―――小学生という身分を考えると到底不可能だが―――であれば、アリシアちゃんを連れて行くという選択肢がありえるかもしれない。だが、今回の旅行は、アリサちゃんの家族旅行におまけで連れて行ってもらえるようなものだ。とてもじゃないが、アリサちゃんに対して、アリシアちゃんもお願いできませんか? なんて、ずうずうしいことはいえない。
それに、温泉旅行ということは、どこかの旅館なのだろう。それを考えると子どもひとり分とはいえ、今更、一人増やすというのは不可能だろう。そういった事情を考えるとアリシアちゃんが僕と同行することはほぼ不可能だといえる。
「え〜」
そんな事情が分からないアリシアちゃんは不満の声を漏らす。しかし、不可能なものは不可能なのだ。さて、どうやって納得させるか? と考えているところに母さんから助け舟が入った。
「アリシアちゃん、ショウちゃんと一緒に行くのは無理だけど、母さんと一
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