無印編
第二十一話 中
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僕が接客室に呼ばれたのは丁度二時間目の授業が終わった後のことだ。母親が来ているからという理由で授業が終わった後、接客室に来るように授業を担当していた先生から呼ばれたのだ。さすが、大学付属の私立なだけあって、普通の学校にはなさそうな保護者用の接客室がある。私立の学校にとって保護者はお金を落としてくれる大事なお客様だ。粗相があってはいけないのだろう。
二時間目と三時間目の授業の間の休み時間は15分しかない。だから、廊下を少し早足で接客室へ向かいノックの後に部屋に入ると、そこには、あらあら、と言いながら僕の担任と話す母さんと弟の秋人を抱えているアルフさんと秋人の相手をしているアリシアちゃんの姿があった。
「あら、ショウちゃん」
入室した僕に最初に気づいたのは母さんだった。相変わらず家でも浮かべている柔和な笑みを僕に向ける。
「ずいぶん、学校で頑張ってるみたいね。母さん、鼻が高いわ」
コロコロと笑う笑みがいつもよりも上機嫌に見えたのは、おそらく先生から色々といわれたからだろう。僕が視線を先生に向けてみると、やり遂げたような笑みを浮かべてこっそりとサムズアップしていた。
いや、何を話したんですか? 先生。
先生が話した内容が少しだけ気になったが、それを聞いている時間はない。幸いにして次の時間は移動教室などではないため、しばらくは大丈夫だろうが、それでも授業が始まるまでには戻りたいのだ。授業の途中で入ると悪目立ちしてしまうから。だから、僕は先生と母さんの話を無視して話を進めることにした。
「それで、学校まで来た理由は?」
「ああ、そうね。ショウちゃん、お弁当忘れてるでしょう? だから持ってきたのよ」
母さんは、自分が持っていたバッグの中からいつも僕が持ってきているお弁当の包みを取り出した。
あ、そうだった、と今更ながら、僕は自分がお弁当を持ってきていないことを思い出す。本当なら昼休みの前に電話してみようと思っていたのにこうして持ってきてもらえるとは。わざわざ来てくれたのなら申し訳ないように思える。
「ほぉ、蔵元が忘れ物とは珍しいな」
「まあ、たまにはそんなこともありますよ」
珍しいものを見たといわんばかりの先生に対して僕は、曖昧に笑いながら受け流した。まさか、昨日の夜は家に帰っておらず、別の場所から直接学校に来たなんてことは言えないからだ。
その僕の笑みを先生は、恥ずかしがっていると都合よく解釈してくれたのか、それ以上、何も言わなかった。その代わり、視線を僕から母さんの隣に座っているアリシアちゃんに移す。アリシアちゃんは、彼女の隣に座っているアルフさんの腕に抱かれた秋人の目の前で指を動かしながら、それを言葉にならない声を出しながら追いかける秋人で遊んでい
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