無印編
第二十一話 前
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「アリサちゃん、最初から説明しないとショウくんも分からないよ」
アリサちゃんの隣に座るすずかちゃんがフォローしてくれるが、すずかちゃんはもう話を聞いているのだろうか。彼女は事情が分かっているようだった。そして、その話については、すずかちゃんも承知しているようにアリサちゃんと同じように笑みを浮かべていた。
「あ、そうね。あのね、今年のゴールデンウィークは旅行は温泉に行こうってことになって、日本だからすずかとショウも招待していいって。だから、ゴールデンウィークに温泉に行くわよっ!!」
もう、それはアリサちゃんの中では規定事項なのだろう。僕はなにも返事をしていないのに彼女は既にその気だった。
そもそも、ゴールデンウィークの旅行というのは家族旅行ではないのだろうか。それにも関わらず、僕たちが同行していいのだろうか?
「えっと……それは、僕たちが一緒に行ってもいいの?」
「いいわよ。パパとママにはもう了解は取ってるんだから」
だから、褒めなさい、といわんばかりに胸を張るアリサちゃん。
いやいや、せめて僕の予定とか聞こうよ、と思ったが、よくよく考えたら、僕はゴールデンウィークには何所にも行かないってアリサちゃんに話しているんだった。一年生のときも二年生のときもだ。だから、三年生の今でも同様だと思っても不思議ではない。すずかちゃんが先に話を知っていたことから考えると、いつも旅行に行っているすずかちゃんには先に承諾を得ていたのかもしれない。
「いつ行くの?」
「ゴールデンウィークの終わりのほうで二泊三日よ」
もしかしたら、アリサちゃんの家ではゴールデンウィークの頭のほうで仕事が入ってしまったのかもしれない。だから、今年は海外などではなく、日本国内の温泉なのか。アリサちゃんの家の内情はさておき、やはりゴールデンウィークの家族旅行に同行するのは気が引けるのは確かだ。しかしながら、ゴールデンウィークも間近に迫ったこの時期に旅館などの予約を取ることはほぼ不可能だろう。それを考えると、もう予約などは済んでいるのだろう。このギリギリまで黙っていたのは、アリサちゃんが僕を驚かせるためなのだろう。
「ちなみに、拒否権は?」
「……ショウはあたしたちと一緒に行くの嫌なの?」
一応、僕が尋ねてみると、アリサちゃんは僕の想像に反して、急に気弱になったように不安そうな顔をしてきた。いつものように強気で、ないわよっ! といわれれば、多少は反骨精神も生まれようものだが、さすがにこの表情を前にして、嫌とは言えない。これが計算なら女は怖いと思うのだが、さすがに三年生ではありえないか、と思いながら、退路がすべて絶たれたことを自覚した。
「そんなことないよ。分かった。親と相談してOKだったら、行く
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