無印編
第二十一話 前
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かべていた。
僕としては、別に片手が塞がっていても今は問題がない。だから、そのままにして、僕たちは教室へと向かうことにした。
屋上から教室への移動はさほど時間がかかるわけではない。時間にしてみれば、五分よりも短い時間だろう。その間、僕たちの間には今更ながら、僕がなのはちゃんの体の心配をしたり、あまり無理をしないようにと小言だったりしたが、なのはちゃんは何故かそれを嬉しそうに聞いていた。
「それじゃ、僕はこれで」
「………うん」
教室の前まで来た僕たちは分かれる。僕が第一学級で、なのはちゃんは第二学級なのだから仕方ない。だが、なのはちゃんは名残惜しそうな表情をし、先ほどまで僕と繋がっていた手を僕との温もりを忘れないようにもう片方の手で包み込むようにしていた。
「………私もショウくんと同じクラスだったらよかったのに」
「えっと、なのはちゃんも頑張れば一緒のクラスになれるんじゃないかな?」
昨今のゆとり教育といわれるいわゆる皆平等という教育に対して喧嘩を売るようにこの学校は、完全な実力主義といっていい。クラスは完全に成績順だ。だから、僕と一緒のクラスになろうとすれば、なのはちゃんが上位30位以内に入ってしまえばいい。一年生の頃は、同じクラスだったのだ。それが不可能とは思えない。
なのはちゃんは僕の言葉で、ようやくその事実を思い出したのか、表情を輝かせていた。
「うん、ショウくんと同じクラスになるために頑張るね」
「あ、うん。頑張って。僕も応援するから」
勉強するのは悪いことではない。僕が力になれるというのであれば、協力を惜しむつもりはない。
なのはちゃんの協力するといった後は、さすがにこのままずっと教室の前で話し込むわけにもいかず、僕はなのはちゃんと別れて、自分の教室へと向かった。
しかし、教室に行きながら、僕は朝からのなのはちゃんの態度を不可解に思っていた。昨日までは、あんなに積極的に触れ合ってこなかったはずだ。なのに、今日の朝からはやけに積極的に僕に触れてくる。原因として考えられるのは、やはり昨夜のことだろう。それ以外に考えようがないのだが。
さて、この状況で僕が一番危惧するべきことは、僕という友人だけで満足して、他に友人を作ろうとしないことだ。僕はなのはちゃんの友人をやめるつもりはないが、何時までも一緒にいられるとは限らない。この世の中、いつ死んでしまうかもしれないし、確実なことを言えば、中学校は、男女別なのだ。今までのように気軽には会えなくなるだろうし、その頃は思春期にも入っているだろう。それらを考えれば、僕だけが友人というのは非常に拙い事態である。
ふむ、何とかして僕以外の友人を作れればいいのだが。
少なくとも、昨日のことで、利害だ
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