無印編
第二十一話 前
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。そんなに心配していたのだろうか。
「それはよかった。ところで、お腹はすいていないか? 今、君たちのお兄さんが食堂で朝食をとってるから一緒に食べに行くといい」
そういえば、昨日は、あのまま寝ちゃったから、恭也さんとはもう一度会ってないんだよね。士郎さんや桃子さんたちにどうやって説明したかは分からないが、どうやらきちんと来てくれていたようだ。その辺りも含めて聞くべきだろうか。しかし、その辺りはともかく、今はなのはちゃんの元気な様子を見せるほうが先なのかもしれない。昨日、倒れたなのはちゃんを一番心配していたのは恭也さんなのだから。
「分かりました。でも、すいませんが、食堂への場所を教えてくれませんか?」
僕たちが食堂の場所を知らないことを失念していたのか、クロノさんは、しまった、というような表情をしていた。
「すまない。そういえば、君たちには教えていなかったな。ちょうどいい、もう少ししたら僕も朝食に行こうと思っていたんだ。先に済ませることにしよう。こっちだよ」
教えていないことを失念していたことへの照れ隠しなのか、クロノさんは、ガシガシと掻くとその場で踵を返して、僕たちを先導するように歩き始めた。僕となのはちゃんは、クロノさんが見せた表情に顔を見合わせて笑い、アヒルとひよこのようにクロノさんの後ろをひょこひょこと着いていくのだった。
その後、歩くこと五分程度で、大学の学食のような食堂に着いた。どうやら、時間的には朝食の時間帯だったようで、他にも数人の職員のような人たちがトレーをもって並んでいた。クロノさんの案内に従って、僕たちは、同じようにトレーを持って列に並ぶ。さすがにそのときには、もう手を離していた。なのはちゃんは少し離れがたいような表情をしていたが、さすがに手を繋いだままトレーを持つことはできない。
職員の人たちが明らかに場違いな子どもである僕たちに視線でも投げかけてくるかと思ったが、あまりその手の視線を感じることはなかった。物珍しさに一瞥すことはあっても、それ以降は、同じ人が視線を向けかけてくることはなかった。むしろ、僕たちを目に入れないようにしているような気さえする。
まさかね、と、僕は自分の中の想像を笑ってしまった。僕たちのような初対面の子どもに、そんなことを考える人はいないだろうと思ったからだ。おそらく、時空管理局という組織の中で、じろじろ人を見るものでもないという教育でも受けているか、あるいは、みんな、朝食に目がいっているのだろう、としか考えなかった。
列に並んでいるとやがて僕たちの順番が来た。トレーに載せられたのは、野菜が使われたサラダとロールパンが二つとベーコンと目玉焼きのセットだった。これだけあれば十分すぎるほどで、むしろ、子どもの僕には多すぎるぐらいだと思った。
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