第四話 激闘
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たのは己が手に宿す蒼雷をぶつけるため。
そして少年は指先で相手を貫く貫手と呼ばれる技で獣の首筋を迷うことなく貫く……はずだった。
だが獣の首筋には硬い脂肪に厚く覆われていたため貫くことはできずにいた。
その刹那とも言える一瞬少年は確かに動揺し硬直した。百戦錬磨の獣はその機をみすみす逃すことはなく反撃に打って出た。
繰り出されるは分厚い尾の攻撃。タイヤのように硬く、しなやかな尻尾は空気を切り裂き少年の腹部を殴打した。
「――ッッ!?」
そのあまりの衝撃に少年は呼吸ができず、そのまま海辺へと一直線に吹き飛んだ。砂場に身体を何度も打ち付けながらも中々勢いが止まらず、やっとのことで止まったときは相手との距離が二十メートル以上開いていた。
少年はうつ伏せの状態で横隔膜から何か異物がせり上がるような異変を受け、その何かを砂場に吐き出した。出てきたものは自身の血であった。
まるでペットボトル一本分はあろうかという多量の血に、何より吐血という経験がなかったため動揺するも、そんな時間はないとばかりに彼の第六感が働いた。
うつ伏せの状態から振り返ることなく四脚動物のように手足を駆使して真横へと飛んだ。そして数秒もしない内にその行動が正解だったと気づく。
直後、少年がいた場所から爆音が鳴り響いた。数秒前まで彼が倒れ込んでいた位置は砂埃が巻き上がり大きなクレーターが作られていた。
そうシャクレノドンは空高くから、自慢の身体で押しつぶさんとプレスをかけていたのだ。その光景に彼はもはや冷や汗かどうかも分からない汗をかき、息を呑んだ。
砂埃が晴れるとそこにはシャクレノドンが追い詰めたぞとばかりに笑みを浮かべていた。
そんな追い詰められた状態でも少年は諦めの色を見せなかった。勝負が始まった時と何ら変わりなく堂々と佇んでいる。
しかしシャクレノドンはそれがやせ我慢であることを見抜いていた。彼は今倒れてしまいたいほどダメージを受けているということを。そしてそれは自然界でよく目にする擬態と似たような行為だと。
シャクレノドンはこの勝負に決着をつけるため、再び突撃を仕掛けた。避けられるであろうことは最初のカウンターですで分かっている。しかし自身はそのカウンター攻撃に耐えられることも知っている。尚且つ相手は重傷を負い、身体を動かすことすらままならない。この勝負もらった、そう獣は確信していた。
しかし、少年は先ほどまでとは違い真っ向から突撃を仕掛けてきた。そのことにシャクレノドンは驚きながらもやはり勝算はこちらにあると思い突進のスピードを緩めることはなかった。
凄まじい速度で交差した少年と獣は夕暮れの海を背にしたまま静止した。そして――結果が訪れる。
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