暁 〜小説投稿サイト〜
トリコ〜食に魅了された蒼い閃光〜
第二話 現状確認と絶望と拾い食い
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花、耳を澄ませて初めて聞こえてくる荒い息の音が聞こえてきた。
 その息の主は間違いなくこちらに近づいてくることは用意に理解できた。
 
 俺はすぐにうっそうと生い茂った草の中に身を隠した。ドン!ドン!と次第に大きく聞こえてくるその音に自然と冷や汗が流れ落ちてくる。

 それから数分後、十五メートルほど先だろうか。その音の発信源である生物の全貌を見ることができた。重なり合っている草木で視界は悪かったもののその存在は圧倒的だった。
 体長五、六メートル程で強靭な四脚に血がべっとりと付着した鋭い牙。瞳はその生物の獰猛さを表しているほど鋭く威圧的だ。額から左頬にかけて縦に一本ある大きな傷跡も歴戦の獣の風格をより際立たせている

 思わず唾を飲み込んだ。ゴクリと聞こえてくる自分の唾音で相手に自身の位置がバレてしまったのではないかと危惧してしまう。身体全身の震えが止まらない。相手の一挙手一投足に気を配る。

―――瞬間、その生物の鋭い目と合ってしまった。

 殺されるっ!早く逃げなければ!様々な考えが頭を過ぎるが、それとは逆に身体はまるで石化したかのように動けずにいる。
 額から流れ落ちる汗が目に入ろうとも瞬きをした瞬間に殺されるのではないかと思って無理やりにでも目を開ける。
 そいつと目を合わせてから一体どれだけの時が流れただろうか。五分?十分?いやそれ以上に感じてしまう。体感速度では異様に長く感じる地獄のような時間。

 そんな俺の思いとは裏腹にやがてそいつは俺から目を離し優雅に、まるで自身がこの森の王者だと言わんばかりに俺を嘲笑ってからゆっくりとその場を後にした。その後ろ姿は運がよかったなと言わんばかりだ。
 奴がこの場を後にしてから少ししてやっと自分の身体が動くようになっていた。
 
「……ッはぁはぁがはっ」

 呼吸することを忘れていたかのように身体は酸素を求め、そして疲弊しきっていた。
 甘く見ていた。油断していた。楽観視していた。そんな自分にヘドがでる。あんなのと渡り合うつもりでいたのか?冗談じゃない。俺がいくら鍛えようと勝てるわけがない。

 見ればわかる。あいつの牙に付いていた血は真新しいものだった。つまり満腹の状態だったがゆえに俺を見逃したのだ。そのことに悔しいが屈辱を感じるよりも安堵のほうが度合いが大きい。

 もし、あれがこの森の王者だったらまだいい。だが、そうじゃなかったら……あんなレベルの奴がうじゃうじゃいるとしたら

「俺は……生きていけるのか」

 未だ震えている手でリュックから手帳を取り出し、先ほどの生物について調べてみることにした。ただそれは俺をよりいっそう絶望へと陥れる情報となった。


「ほ、捕獲レベル……3だって? う、嘘だろ」


 バロンタイガー(哺乳獣
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