第十五話 神前でその四
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「あれはいいよな」
「面白い動物出すわね」
茉子はそのアザラシの名前を聞いてその目を少ししばたかせて述べた。
「ラッコとかそういうのじゃなくて」
「可愛いからな」
だからだというのである。どうやら彼はこのアザラシが好きであるらしい。
「だからな。観たいんだよ」
「成程ね」
「とにかく行こうぜ。あそこはいい場所だしな」
「うむ、海亀もいる」
流ノ介が海亀を見たがっているようである。
「アシカもいる。そういえば和歌山には白浜パークがあったが」
「ああ、シャチだよな」
源太は海のギャングと言われる巨大な鯨のことを思い出した。
「あれは迫力あるよな」
「修行に夢中で忘れていた。その代わりに水族館では楽しませてもらおう」
「アシカか。あれは可愛いしな」
番も期待していた。しかしここで。
「和歌山のことも思い出したいな」
「そうですね。はい、これどうぞ」
鉄幹が何処からともなく梅干を出してきた。
「最後の口直しに」
「ああ、悪いな」
番はその梅干を箸で取った。そうしてそれを一粒食べた。
酸っぱい。しかしそれ以上に心地よい香りと風味である。彼はそれで口の中も心も一気に爽やかなものにさせた。梅干の力だ。
「よし、行くか」
「水族館の他にも行く場所はあったか」
宝児はこんなことも考えた。
「だがとりあえずはだな」
「そうね。水族館に行きましょう」
最後にスワンが言った。こうして全員で水族館に向かった。観客席で見るアシカのショーも白いスナメリも水槽の中を泳ぎ回るバイカルアザラシも見た。
そしてである。ラッコもだ。全員でラッコを見ながらあれこれ話をする。
「このラッコがですね」
「何かあるんですか?」
ボンバーは先生の言葉に対して問うた。
「実は凶暴とかですか?」
「よく食べるんですよ」
先生が言うのはラッコの食欲についてであった。今一匹が海水の上にぷかぷかと浮かんでその腹の上に置いた石に貝をぶつけてそのうえで割っている。そのうえで中を食べていた。それを見ながらの話だった。
「それもかなりね」
「そうなんですか」
「貝だけじゃなくて海胆や烏賊やお魚も食べますよ」
「色々食べるんですね」
「はい。ですから餌代はかなり大変です」
「ラッコは意外と凶暴だしね」
「そうだな」
美羽と大翔はこうした話もした。
「飼育するのは結構苦労するのよね」
「アシカなぞ比較にならない」
「えっ、そうなの?」
「こんなに可愛いのにかよ」
範人と軍平は二人の話を聞いて目を見開かせて驚いた。
「全然そうは見えないのに」
「毛皮もいいのにな」
「けれど鼬の仲間っすからね」
連はラッコが何であるのかよくわかっていた。
「それも有り得るっす」
「鼬の仲間か。それだったらな
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