『僕』の今日この頃
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からいつも手加減している玲音に勝てず、木刀を寸止めされて終わってしまうのだが、それがとても悔しい。
今回も普段と同様に、二分ほどで僕が負けた。
これでも最初より終わるまでの時間が延びているので、強くなっているのだろうが、あまり実感は湧かないものだ。
それからも間に休憩を挟んで、何度か実践練習を繰り返した。
「ふう、やはり一人でやるよりも捗るな」
「玲音……毎回思うけど……強すぎ……」
僕は息も絶え絶えになっているのに、玲音はけろりとしている。
やはり玲音には全然追い付けそうにない。まあ、だからこそ余計に頑張れるというものだ。
「そう簡単に追い付ける訳がないだろ。それより、しっかりとクールダウンをするぞ」
「わかってるよ」
それからクールダウンを済ませて、今日の練習が終わった。
「ふう。お疲れ」
「ああ、お疲れ。それで、翔夜。今日はあれ、持ってきているのか?」
「え? ああ、うん。もちろん。聴いてくれるんだよね?」
「当たり前だ。そのつもりで来たからな」
「わかった」
僕は笑顔を浮かべて、荷物の中から『ハーモニカ』を取り出した。
このハーモニカは六歳の誕生日の時に買ってもらったもので、僕の今の最大の趣味だ。
何度も練習をして、様々な曲を演奏できるようになったが、『星の在り処』を吹けた時は物凄い感動を覚えた。
このことは、お爺さんからもらった能力が、今までで最も役に立ったと感じたことの一つだ。
「曲目は?」
「お任せで」
「了解。それじゃあ、始めるよ」
そう言って吹き始めた曲は『琥珀の愛』のハーモニカアレンジバージョン。
ハーモニカで吹きやすいように自分でアレンジした曲だ。
約一分の短い曲だが、結構気に入っている。
失敗もなく演奏を終えると、玲音が拍手を送ってくれた。
「いい曲だな」
「ありがとう」
玲音はお世辞を言わないから、誉められると凄く嬉しい。
「さて、翔夜のハーモニカも聴いたことだし、帰るか」
「うん。家に帰ろう」
そうして二人で帰路についた。まあお互いの家が反対方向だから、玲音とは舗装された道に出た時に別れたのだが。
夕焼けの中を一人で歩いていると、なんとなく過去を振り返ってしまう。
それは転生した直後の、とても仲のよかった元の家族や、どうでもいいようなことを真面目に話していた友達のことを思い出して、悲しんだりしていた頃のことだ。
しかし今はそんなことを思い浮かべながらも、転生して本当によかったと思っている。
なぜなら、僕は転生してからいつも幸せだったからだ。
温かい家族に優しい従兄弟、友達は……まあ、その内考えることにするが、こんなに素晴らしい人に囲まれて、自分のやりたいことができているのだ。
き
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