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ソードアート・オンライン 夢の軌跡
一つの終わりと始まり
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うだ。ならば思い付いたものを並べていってみよう。
「もっといいのか? だったら……【高い学習能力と記憶力】、【大きい伸び代】、【丈夫で健康な体】、【幸運】……あとは【原作の知識を時がくるまで忘れない能力】も頼む」
 ……結構な数の力を要求したけど、果たして大丈夫なのだろうか? 欲張り過ぎていないか、少々不安である。
『【原作の知識を時がくるまで忘れない能力】の時とは、いつのことじゃ?』
「その出来事が実際に起こる筈だった時までで、それ以降は自然に忘れさせてくれ」
 忘れる理由は、いつまでも物語と現実を混同しないためだ。
『ふむ、ではそうしておくぞ。それにしても、本当にそれだけでいいのか? 欲のない奴じゃのう。まあ、そういうところが選ばれた理由でもあるのじゃから、これでいいのじゃろうな』
 ……どうも更に多くの力を要求されることを予想していたらしい。
 既に普通からは程遠いような数々の力をもらっているのに、これ以上って……贅沢過ぎるな。うん、俺には今でももったいないくらいなんだし、身にあまる力は自身を滅ぼす、的な言葉を聞いたこともあるからな。
 ……あ。
「だあっ!! 忘れてた! 性別は変わらないんだよな!?」
 俺が急に問いつめると、お爺さんは物凄く(おび)え出した。
 なぜびびっているかは知らないし、大体そんなことはどうでもいい! 今は、この一点のみが、重要なんだっ!
『あ、はい。性別は変わらぬから、少し落ち着いてくれぬかの?』
 ああー、よかった。これでもし、女になるかも、なんて言われてたら……恐ろしいことを考えるのは止めよう。
『ふう、やっと戻ったか。なら容姿は、お主が好きなゲームのキャラクターと同じにしておいてやろう』
「キャラクターって、どのキャラクターだ?」
 ぱっと思い付いた男性キャラクターだけで、五人はいるぞ。
『それは転生してからのお楽しみ、じゃな』
「うーん……」
 ゲームのキャラクターと同じ容姿か……たぶん、悪いことにはならないだろう。
 …………と、信じよう。うん。
「わかった。楽しみにしてるよ」
『では、そろそろ行くかの?』
「ああ。もう大丈夫だ。一人ではできることなんて高が知れてるが、必ず運命(ものがたりのほんすじ)を変えてみせるさ」
 そして笑った。自分でも驚くくらい自然に笑えた。こういうのを屈託(くったく)のない笑みっていうのかもな。
『ほお……これは頼もしいのお。では、そこの扉をくぐると来世の始まりじゃ。赤ん坊の頃は意識がはっきりとしないからすぐに過ぎるじゃろうが、頑張るのじゃぞ』
「そうか。それは助かる。ありがとな」
『お礼を言う必要なんてないだろうに……』
 お爺さんはどこか申し訳なさそうな顔をした。
「いいんだよ。結局は俺が決めたことなんだから」

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