一つの終わりと始まり
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──気が付くと、そこは見知らぬ森の中だった……。
「ここは……どこだ?」
『ここは聖域じゃ』
後ろから厳かな声がしたので振り返ってみると、優しそうだがなにか普通ではない雰囲気を醸し出すお爺さんがいた。
「聖域……? それに貴方はいったい……?」
『ワシか? ワシはお主らのいうところの神の一人じゃ』
「…………はあ」
思わず首を傾げて気の抜けた返事をしてしまった。そんな俺を見て、お爺さんは顔をしかめた。
『やはり信じられんかのう』
「それは、まあ……いきなり目の前に神を自称する人が現れたら、精神を病んでいる人の妄言か、寂しくて誰かに構ってもらいたいご老人の戯言としか受け取れないんですけど」
『……妙に現実感があって嫌な回答じゃのう』
お爺さんは困り顔だが、きっと俺も同じような顔をしているだろう。
『まあよい。お主が信じられなくとも、ワシが神であることに変わりはない』
「……じゃあ、もし仮に貴方が本当の神様だというのなら、なぜ私はここにいるのですか?」
俺の質問に、少しは調子を取り戻して答えた。
『おお。お主がここにいる理由は、ワシが招き寄せたからじゃ。それと、そんなに堅苦しくしなくてもいいんじゃぞ』
「あの、ですが……」
『構わん構わん。変に気にする必要はない』
ここまで言うのだから、本当に大丈夫なのだろう。俺はお礼を告げてから、次の質問に移ることにした。
「わかった。敬語なんて慣れない言葉遣いをするから結構大変だったんだよな。……じゃあ、なぜ俺なんかを呼んだんだ?」
その言葉を待っていたのか、お爺さん……神様……やっぱりお爺さん。が、にんまりと笑った。
そこはかとなく嫌な予感がする。虫の知らせというやつであろうか。
……可能であるのならさっさと退散したいのだが、絶対に無理なのであろう。大人しく話を聞く以外の選択肢がないことがもどかしい。
『ようやく本題に入れるのお。お主をここに呼んだのはほかでもない、お主が条件に一致したからじゃ。じゃからお主には転生してもらう』
「条件? 転生?」
心底面白そうにお爺さんは口を開いたが、逆に俺は極度の緊張から背中に嫌な汗が流れた。もしこれがただの夢であったなら、間違いなくうなされているだろう。夢見が悪いなんて段階はとうに越えている。
ただ、このまま黙っていても仕方がないので、誠に不本意ながら続きを促した。
「それで?」
『うむ。条件とは、『ソードアート・オンライン』を知っていること、加えて善人であることじゃ。そしてお主にはそこの平行世界に転生してもらうことになるな』
「ちょ……ちょっと待ってくれ! 俺は善人でもないし、そもそもなぜ貴方は俺を転生させようとしているんだ!?」
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