萌芽時代・抱負編
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引き戻して来た一族の者達に、大火傷を負った忍びを任せて、私はもう一人へと向き直る。
傷ついた仲間を担いで、必死に走って集落まで戻って来たのだろう。私が治療を行っている間、仲間から一瞬たりとて目を離さなかった彼は、もう大丈夫だと知ってぼろぼろと涙を零した。
「今度はお前の番だ。先の奴よりも軽症とはいえ、お前だって怪我人なんだ。大人しくしていろ」
「うぅ……っ! すみません、柱間様。本当にすみません……!」
肋骨が数本砕かれ、全身に刻まれた裂傷……左の腕なんて筋が切られている。
そして先の忍び同様、彼の体のあちこちに火傷の痕があった。
この傷で、よくぞここまで負傷した仲間を担いで走って来れたものだ。
「よく頑張ったな……。お前のお蔭であいつはもう大丈夫だ。流石のオレも、死者を生き返らせる事は出来ないからな」
「死者……。そうです、柱間様。お伝えしなければ……!」
動く右腕を必死に動かして、彼は私の右腕を掴む。
ぎらぎらとした輝きの両眼に射すくめられ、私は何故か自分の耳を塞ぎたい衝動に襲われた。
「我々は、任務中に敵方の忍びの集団の襲撃を受けたのです……!」
必死に紡がれる言葉に、その場に残っていた一族の者達も医療道具をもって走り寄って来たミトも、動きを止める。
降りしきる雨音に吸い込まれない様に、彼は必死に声を張り上げる。
――気付けば治療は既に完了していて、私は自身の腕を掴んでいる彼の手に自分の手を重ねていた。
「今回の、雇い主の敵方に当たる者達が雇った忍びで……、我々は応戦したものの……」
苦しそうに、慚愧の念に耐えかねる様に彼の表情が歪む。
「頭領を始めに、奥方様……ならびに俺達以外の一族の者は……皆、やられました」
絞り出された声に、扉間やミトを始めとする一族の者達が一斉にざわめく。
頭領は私の父上、奥方様は母上の事だ……私の両親は彼の言う事が正しければ敵に殺されてしまったのか。
「待て! まだ父上や母上が亡くなったと断じるには早すぎるのではないか!」
悲鳴の様な声が隣の扉間から上がる。弟の叫びに呼応する様に、他の者達も次々に同意の声を上げた。
「俺だって……! 俺だってこんな事言いたくない! でも、見たんだ!」
俺達が逃げられる様に前に出た頭領が、首を刈り取られたのを……!
頑健な千手一族と言えど、首を切り落とされてしまえば即死だ。
一族の者達が息を飲み、ミトが膝から崩れ落ちる。扉間の口の端から、押し殺した憤怒の声が漏れた。
「相手の特徴を覚えているのか?」
「黒髪に、赤い目を持っていた……。それに、鎧に刻まれた『うちわ』の家紋……」
「写輪眼の、うちは一族じゃな。“千の手を持つ一族”と呼ばれる我
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