萌芽時代・出逢い編<後編>
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私はアカイロに心を奪われてしまうらしい。
「勿体無いな。こんなに綺麗なら、本体で来れば良かった」
辺りに散らばる森の残骸も、死臭漂う空気も気にならない。何かに取り憑かれた様に、九尾を見つめて笑う。
自分でもどうにかしている、と頭の冷静な部分が小さく囁いたが無視した。
『――――お前、影分身なのか?』
「まあね。仲間がここには寄らない方が良いと言うから、本体の方は迂回路を取ってる」
荒れ狂っていた九本の尾は、今では風に吹かれて軽く毛並みを揺らすだけに留まっている。
純粋に、恐怖を感じずにこの獣を見つめる事が出来るのは、ここに居る自分が影分身なお蔭だろうか。
でも少しばかり勿体無かったな、と思う。
目の前の獣が、地響きの様な笑い声を上げた。
『面白い! 長い時間を生きて来たが、このワシを見てそのように間抜けな事を考えていた人間はお前が初めてだ!!』
「間抜けって、はっきり言うなぁ」
まあ確かに、生き死にのかかる時にそんな事を考える人間はそうそういないだろうよ。
そっと、私の乗っていた尾が動いて、より鮮血の瞳に近付いた。
『名を名乗れ、人間。長い時を過ごすための暇つぶしだ。このワシを見て惚けた人間として、記憶の片隅に留めてやる』
「偉そうな狐だなぁ。まあいいけど」
ふ、と口の端を持ち上げて不敵な笑みを浮かべて見せる。
「森の千手一族が一人――千手柱間だ。柱間と呼んでくれ」
自分の胸に手を当てて、声を張り上げる。
朗々と、私は目前の圧倒的な存在感の獣から視線を外す事無く、己の名を宣言する。
――――獣が愉快そうに嗤うのを目にして、私は影分身を消した。
「お帰りなさいませ、柱間様!」
迂回路を取ったせいで、予定の時間よりも遅くなってしまったのだが、私達は無事に集落へと辿り着く事が出来た。
そして、そんな私達を出迎えてくれたのは、鮮やかな赤い髪に灰鼠色の瞳の美少女。
言わずもがな、私の愛しの妹であり、数少ない癒しであるミトだ。
「ただいま、ミト! 遅くなって済まないな!」
「ご無事で良かったです!」
胸元目がけて飛び込んで来たミトを抱きすくめて、勢いのままくるくる回る。
ふふん、羨ましいだろう野郎共!
「扉間も、皆さんも、お仕事お疲れさまです! お風呂の準備をしておりますので、まずはゆっくりと疲れを落として下さいな」
そう言ってにっこり笑ったミトに、後輩忍者が見蕩れる。
私の視線に気付いた先輩忍者が、慌てて後輩忍者の頭を小突いた。
言っとくが私を倒せる様な男でないと、妹はやらんぞ。
「扉間。オレは父上に今回の任務についての報告をしてくるから、先に風呂に入ってろ」
「そんな! あね
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