スペインに死す
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うだ。
「おう、意外なところで合ったな」
男は後ろを振り向いてニカッと笑った。やはり立花藤兵衛その人であった。
「意外なところって」
面食らったのは一文字であった。
「まさかこんなところにいるなんて。一体どうしたんですか」
「スペインにいる、って聞いてな。それで来たんだ」
「よくセヴィーリアにいるってわかりましたね」
「本郷に聞いたのさ。あいつなら御前の居場所がわかるからな」
「そうだったのですか」
本郷と一文字は互いの脳波を感じることで互いに何処にいるかがわかるのだ。それも彼等の絆の深さの一つとなっているのだ。
「それでもこんなに早く出会えるとは思わんかったぞ。それもこんなところで」
「俺もビックリしていますよ」
「ははは、実はわしもだ」
二人はそう言って笑い合った。
「そもそもこんなスペインの南の街で日本人が会うことも珍しいからな」
「ええ。確かに」
彼は歩きはじめた。立花もその横にいく。
「案外日本人は少ないんですよね、この街」
「確かにな。皆バルセロナとかに行っちまうからな」
「そういえばそうですね。しかしこの街って結構有名なんですよね」
「フラメンコでか?」
「いえ、オペラで」
「そっちでか」
立花はそれを聞いて意外そうな顔をした。
「わしはオペラはあまり知らないんだ、悪いが」
「そうなんですか」
「どっちかというとフラメンコかな。あれは結構好きだ」
「スペインといえばあれですからね」
「ああ。どっかで見られるかな」
「そうですね」
一文字は立花に問われ辺りを見回した。既に酒場の並ぶ場所に来ている。
見たところ何件かある。だがどれも昼なのでまだ閉まっている。
「夜に行きますか」
「そうだな。酒は夜飲むのがいい」
「ここじゃ違いますけれどね」
欧州では昼からワインを飲むことが多い。水が悪くそうせざるを得ないからだ。
「じゃあまずは宿でも探すか」
「はい」
こうして二人は市場と酒場をあとにした。そして宿を探しに行った。
「そうか、市場にいるか」
死神博士はそれを基地の指令室で聞いていた。
「ハッ、既に我々の存在は察知しているものと思われます」
報告をした傍らに立つ戦闘員が敬礼して答えた。
「そうか」
博士はそれを聞いて頷いた。暗い基地の中で赤い円卓に一人座っている。座っているのは車椅子だ。
「ならばこちらも動くとするか」
彼は顔をいささか俯けたまま言った。
「はい」
戦闘員は頷いた。そして彼の背後に回ろうとする。
「よい」
だが彼はそれを手で制止した。マントが微かに翻る。
「一人で充分だ」
すると車椅子はひとりでに進みだした。誰も手を出していないのに、である。
「行くぞ、他の者にも伝えるがよい」
「わかり
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