スペインに死す
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聞きなおした。
「何でもない」
だが大使はそれを打ち消した。
「ところで今ライダー達が日本に続々と戻って来ているそうだな」
「はい」
「どうやら決戦の時が近付いてきているようだな」
彼の笑みが凄みのあるものになった。
「その準備にも取り掛かれ。まだ時間はあるがな」
「わかりました」
戦闘員は敬礼をして応えた。
「それで全てが決まる。バダンの世界がな」
「はい」
「よいな、我々は必ず勝つ。それは既に決められたことなのだ」
彼は確固たる自信をもってそう言った。
「行くぞ、勝利は我等と共にある」
「はい」
暗闇大使は戦闘員を連れその部屋を後にした。そして彼もまた戦いに備えるのであった。
一文字隼人は今セヴィーリアの街中にいた。
「中々面白い街だな。美人も多いし」
それが彼のこの街を見た最初の感想であった。
このセヴィーリアはメリメの小説、ビゼーのオペラ『カルメン』の舞台として名高い。自らを自由なジプシーの女と呼ぶ奔放な女性カルメンは生真面目な田舎出身の騎兵伍長ドン=ホセに惚れる。彼の整った顔が気に入ったのだ。それから話がはじまる。
やがて二人は愛し合うようになる。だがカルメンは自由な女だ。次第にホセに飽き他の男に惚れるようになる。捨てられたホセは彼女に寄りを戻すよう詰め寄る。だがカルメンはそれを断り逆上したホセは彼女を刺殺してしまう。世界各国のオペラハウスで上演されるのであまりにも有名なセヴィーリアを舞台として悲劇である。
カルメンだけでなくこの街は多くのオペラの舞台となっている。
ロッシーニの『セヴィーリアの理髪師』。頭の回転の速い散髪屋フィガロが伯爵と元気のいい娘の恋愛を成就させる話である。
その続編にあたるのがモーツァルトの『フィガロの結婚』だ。今度はそのフィガロが結婚するのだがそれを巡る一夜のドタバタ劇である。ロッシーニもモーツァルトもボーマルシェ原作のこの作品に素晴らしい音楽を与えている。特にモーツァルトのそれは彼が何故天才とまで呼ばれたかということを雄弁に語っている。
モーツァルトは他にもこの街を舞台とした作品を作曲している。
デーモニッシュな魅力を漂わせた『ドン=ジョバンニ』、奇妙な恋愛劇である『コシ=ファン=トゥッテ』、どれもモーツァルトの名作である。端役なし、駄作なしとまで言われる彼の作品においてもとりわけ有名な作品達である。
またこの街はイタリアの作曲家ヴェルディも舞台にしている。
不可思議なジプシーの女アズチェーナの復讐とその息子マンリーコと実は彼の兄であるルーナ伯爵の美少女レオノーラを巡る争いを描いた『トロヴァトーレ』。これは炎が支配するヴェルディの作品の中でも最も情熱的であり、かつ最も暗い炎が味わえる傑作である。ヴェルディは男の暗い情念の炎を曲に
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