萌芽時代・発覚編<前編>
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るとこれから生まれてくるのかと高を括り、取り敢えず世の中は戦国時代なのだから自分を鍛える事を第一に、いずれ生まれてくる柱間を待とうと木遁に付いて調べながら、来年の命名の儀式を楽しみに二歳年下の弟を可愛がりながら過ごしていたのだが。
――――そんな暢気な事を思っていた自分をぶん殴ってやりたい。
「どうした。その名前が気に入らないのか?」
目の前には微妙に眉根を下げた父上。今日も相変わらずダンディですね……ではなく。
厳めしい顔付きはそのままに、どこか心配そうな父上を見つめて、慎重に自分は口を開いた。
「……あの、父上。この柱間と言う名を持つ者は、私の他にいるのですか?」
お願いだからいると言ってくれ!!
そんな切なる願いを込めた私の眼力をどう読み取ったのか、我が父上様は素敵に微笑まれた。
「安心なさい。我が一族の中で柱間という名を持つ者は、これからもこの先も、お前一人だけだ」
……聞きたかったのはそう言う言葉じゃないのです、父上。
*****
「千手柱間」
この度、七歳になった自分が父上から拝命したばかりの、ありがたい名である。
しかしながら、あれほど望んでいた自分だけの名前と言う物を私は素直に喜べなかった。
それは偏に私が持っている前世の記憶の中に、同姓同名の人物が居たからに他ならない。
――某・忍者漫画に出てくる“千手柱間”と言う人物を私なりに纏めるのであれば、彼は色々な意味で人生はプラマイゼロであると証明した人だった。
全忍の頂点に立ち、類い稀な戦闘能力と圧倒的なカリスマ性を備え、数多いる忍びの中で唯一木遁忍術を操ったとかいう凄い人物であった――その一方で。
仙人の肉体に木遁という珍しすぎる血継限界のせいで、死して尚その能力を求められ、細胞やら何やらを盗られた挙げ句、物語の後半には誰かは忘れたが他所の男の体に顔だけ張り付いて登場する羽目になるのだ。
……何が悲しゅうて、他所の男に顔だけになってくっ付かなにゃならんのだ。
もしそんな立場に置かれたら断固として拒否させて頂きたい、と前世の私は色々な意味で報われていない「柱間」を哀れんでいたのだが。
――――それが悪かったのか。
一歩譲って、ここがNARUTO世界である事は認めよう。
百歩譲って、自分が千手一族に生まれた事も認めよう。
――だがしかし。
千歩どころか一万歩譲っても、自分が「千手柱間」である事は認めたくない。
何故なら。
「“千手柱間”って、男だっただろう……」
「どうしたのですか、姉者?」
思わず縁側に座ってそんな事を呟くと、隣にちょこんと座っている銀髪の少年が不思議そうに首を傾げてくれる。
そうなのだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ